「都市vs地方」生まれによる教育格差の深刻度 ベストと思う進路でも出身地域で差がある理由

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その点、松岡氏は現在の教職課程でほとんど教えられていない「教育格差」を必修科目にすることを提案している。世代を超えて格差が再生産されるメカニズムを教員が学ばなければ、子どもの出身家庭や出身地域といった背景を見ずに「この子は学習意欲がない」といった誤った理解、指導をしてしまう可能性があるからだ。比較的恵まれた家庭出身で学校教育になじんで大卒になった教員が多いことを考えると、教育格差について体系的に学ぶ意義は大きい。

さらに、教育格差を小中高校といった子どもの問題としてのみ捉えるのではなく、「成人後も学び直しができるようにする」(松岡氏)ことで、長期的な視点で改善を図る方法もあるという。社会人になっても、よりよく生きるための学びを継続すれば、自分の人生をもっと広げることができるということだ。

OECD(経済協力開発機構)の国際成人力調査によれば、日本は先進国の中で、「新しいことを学ぶのが好きだ」と回答した割合が最も低い国の1つだという。多くの人は最終学歴を経た後は、学びも終わりと思っているようだ。

「社会の中では、教育だけではなく何であれ100%自己責任ということはないと思います。何が自分を制約しているのか、どんな条件があれば学び続けることができるのかを自覚することができれば、変える糸口が見えてくるはずです。1人でも多くの人が、何歳になっても自分の可能性を追求し続ける活力のある社会になればと願っています」

松岡亮二(まつおか・りょうじ)
早稲田大学 准教授
ハワイ州立大学マノア校教育学部博士課程教育政策学専攻修了。博士(教育学)。東北大学大学院COEフェロー(研究員)、統計数理研究所特任研究員、早稲田大学助教を経て、同大学准教授。日本教育社会学会・国際活動奨励賞(2015年度)、早稲田大学ティーチングアワード(15年度春学期、18年秋学期)、東京大学社会科学研究所附属社会調査データアーカイブ研究センター・優秀論文賞(18年度)を受賞。著書『教育格差ー階層・地域・学歴』(ちくま新書)は、1年間に刊行された1500点以上の新書の中から中央公論新社主催の「新書大賞2020」で3位に選出された。21年2月時点で、13刷・5万5000部

(注記のない写真はiStock)

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