現役先生に聞いた「学校のICT活用」の進み具合 小・中・高校、大学の先生と塾関係者が語る実態

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子どもは面白いと思ったら「勝手に伸びていく」

――ICT活用はどのような効果をもたらすと考えていますか。

薄井 一人ひとりが主役になれるのが大きいですね。学校では緊張して話せなくなってしまう子も、プレゼンテーション資料を使えば、文字や写真で自分の考えを伝えられます。絵のうまい子は図にまとめる。話すのが得意な子は、YouTuberや芸能人の語り口をまねてノリノリで話す。そのような表現活動を重ねるうちに、それぞれが個性を出して主体的になり、互いを尊重し合えるようになると感じています。

中村 1人1台の環境だと、一人ひとりの声が届きやすくなります。学校では授業でTeamsのチャットを使うことがあります。先ほど紹介した、「龍中ゴミ問題解決プロジェクト」の発表会では、各グループの発表後、全校生徒がそのチームに対して、意見や感想、質問などを書き込み、フィードバックを生徒から生徒へ返すという場面がありました。

そこで、中学2年生のグループがマインクラフトを使って製作したプロトタイプで火を使用していましたが、その点について、中学1年生から、「火を使うのでCO₂が排出されるのでは?」と問題を指摘され、返答に困っていると、中学3年生から「植物を置いてCO₂を吸収させれば?」などの助言が書き込まれました。異学年の意見交換を行いやすいのも1人1台の恩恵ではないでしょうか。

岩居 以前なら、自分の外国語の発音が通じるかどうかを確認するためには、先生などに聞いてもらうしか方法がなかったのですが、スマホの音声認識機能を使えば即座にわかります。また、学習成果をビデオ撮影するときも、デジタルなので、何度失敗してもやり直しができます。このような即時レスポンスとトライ・アンド・エラーができる環境が学生のやる気を引き出し、先生から「受け取る」だけの従来の学びの風景が、主体的な方向へ、一緒に作る学び、人を楽しませる学び、さらに、学んだことを自分のものとして再構築する学びへと進化すると考えています。

大阪大学サイバーメディアセンター 教授 岩居弘樹
ドイツ語学習、複数言語を学ぶ「複言語学習」を実践研究する。教員向けにICT活用法も発信。オンライン授業法を解説するサイト「Zoom+α」を開設し、昨年3月から行っている「+α相談会」では、国内外の延べ2500人を超える教員からの相談に応じている。Apple Distinguished Educator(画像提供:iTeachers)

小池 生徒主体の学びへのシフトは、教育ICTの大きなテーマです。ICTをうまく活用している学校の共通点は、先生と生徒が、教える側と教えられる側という従来の関係にはない、良好な関係性を築いていることだと思います。また私が勤務する塾では、生徒が先生役になって英語の授業を行い、その模様を動画で保護者に公開するという取り組みを開始しました。保護者とのコミュニケーションの機会を増やし、巻き込んでいくことも大切になると考えています。

教育ICTコンサルタント 小池幸司
大手学習塾で講師、広報・IT責任者を歴任。同社でのiPad導入を機に公教育にICTを広めようと、ライフワークとして教育ICTに関する情報発信を始める。YouTubeチャンネル「TDXラジオ」を開設し、新しい学びと先生の働き方改革をテーマにした番組「Teacher's [Shift]」を配信している(画像提供:iTeachers)
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