新渡戸文化学園、約4割が「兼業教員」のワケ 「教員の幸せ」を追求する働き方改革とは?

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今の教育は、先生に多くの負担と責任をお願いして成り立っていますが、先生はもっと1人の人間として感情豊かに生きて、幸せを追求してほしいと心から願います。だから、兼業したいならばぜひ応援したいです。もちろん本業にマイナスとなってはいけませんが、先生は基本的にとてもまじめな人たちなので、きちんとできると信じています。違う世界を見ることは先生の新たなインプットにもなり、結果的に生徒たちにメリットを還元できると思っています。先生を幸せにすることが理事長としての私の仕事だと考えています」

大学院通いや留学も可能にしていく

「複数の場所で働くことによって、よりよい教育がつくれる」と、山本氏は言う(撮影:今井康一)

山本氏も、複数の場所で働くメリットについて、こう語る。

「タイムマネジメントは大変ですが、世の中を俯瞰的に見られるようになります。ほかの学校の先生や企業の方とコミュニケーションする中で、社会で求められる力が理解できるし、それを授業やカリキュラム作りに生かせます」

今後、同学園では働き方の多様化とともに、教員が学ぶ機会もさらに増やすという。例えば、企業との交流機会をつくるほか、働きながら大学院に通ったり留学したりすることも可能にしていく。1カ月間ほど教員が入れ替わるような「学校間の交換留学」も検討中だ。また、平岩氏は、厳しい時代の中でも研修予算だけは守り抜きたいという。

「現在は校種ごとに研修予算があり、挙手制で使えるようにしていますが、将来的には個人に『自分育成予算』を持っていただき、受けたい研修を自ら探し、自分で自分を育てていってほしいと思っています。先生も学ぶ存在として、生徒と同じ側に立っていてほしいのです。“生徒と共に学ぶ”のが未来の先生像だと思っています」

小・中・高において1人1台のiPadを整備し、EdTechを導入するなどICTによる学び方改革が進む同学園(関連記事はこちら)だが、「テクノロジーやICTを活用した働き方改革は進化の余地が大きい」(平岩氏)。教材のデジタル化を進め、事務的な仕事もさらに減らしていきたいという。21年度には人事システムを刷新し、教員が自分の労働時間をきちんと把握してコントロールする形にしていく。

「私がオランダで見た先生たちは勤務中に笑顔で私にコーヒーを振る舞ってくれて、16時には帰宅していました。今は新しい挑戦を重ねているので残業が発生していますが、先生が定時に帰れる環境を必ずつくりたいと思っており、3年以内の『残業ゼロ』を目指したいです」

同学園は、こうした働き方改革も進めながら「子どもたちが主語」となる教育を実践し、自分が勝ち抜くために学ぶだけではなく、自分も他人も幸せにできる子どもたちの育成を目指している。しかし、平岩氏の夢はここにとどまらない。

「私たちの取り組みを、よいことも悩んだこともどんどん他校の皆様にも伝えていきたい。先生方も皆、未来の学校像をつくって日本中の学校を幸せにしたいという夢や志を持っています」

成果が見えてくるのはこれからだが、同学園の挑戦は、新時代の教育を考えるうえで参考になることがあるのではないだろうか。今後も、同学園の改革に注目したい。

(文:編集チーム 佐藤ちひろ、注記のない写真は梅谷秀司撮影)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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