新渡戸文化学園、約4割が「兼業教員」のワケ 「教員の幸せ」を追求する働き方改革とは?

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平岩氏は、山本氏が望む働き方を歓迎した。実際に山本氏は今、学校改革と中学・高等学校の英語授業を兼務しながら、週1日は横浜創英中学・高等学校で授業を受け持ち、教員研修や授業アドバイスなども務める。また、5つの企業と契約し、教材や教育関連アプリの開発にも携わっている。

しかし、こうした新しい働き方は山本氏の特権ではない。「申請制で先生全員に『二刀流』を認めています」と、平岩氏は話す。現在、小・中・高における正規雇用の専任教諭で、学外組織の肩書を持つ人の割合は36%。彼らは、同学園での勤務日数を減らしたり、夜間や休日の時間を使ったりして、大学教員や民間企業での研修講師、ワークショップデザイナー、執筆業、舞台俳優、YouTuberなど、各自の活動を展開しているという。

全国に推奨したい「チーム担任制」

中には小学校高学年の担任を務めながら、週4日は同学園で、週1日は前職の学習塾で働く教員もいる。担任を持つと兼業は難しそうだが、これを可能にしているのが「チーム担任制」だと、平岩氏は説明する。

平岩氏自身も、同学園理事長、NPO代表理事、渋谷区教育委員という3つの顔を持つ

「チーム担任制は、小学校では1学年(2クラス)を3人の先生で担当する形で試行中です。チームで仕事内容を共有するので、出張や兼業、休暇などで誰かがいなくても対応でき、心理的にも1人がすべてを背負わずに済みます。高学年の場合は教科担任制もあるので、さらに1人ひとりの負担が軽くなります」

この仕組みを先行実施してきた中学校では、進路指導や勉強のモチベーション向上といった各教員の得意分野を、クラスの必要に応じて生かせるメリットも感じているそうだ。また、この仕組みは、子どもたちにとってもプラスに働くという。

「担任が1人だと相性が合わない子どもは我慢し続けることになるし、いじめやトラブルの発見が遅れるケースもあります。不登校や学級崩壊などは、こうした教室のストレス状態に端を発していることも多いと考えています。22年度から公立小学校も高学年の教科担任制が本格導入となる流れですが、理想としてはチーム担任制も全学年で導入されるといいなと思います。

また、私たちは『小学校アフタースクール』の外部講師が中・高の部活も見てくれているので、教員の放課後の負担が圧倒的に少ないです。国も部活動指導員の制度活用を推奨していますが、先生の放課後負担の解消はどの学校も絶対に取り組むべきです。ただし、チーム担任制も部活運営も、人員体制をつくるためには、もっと日本中で教育現場に予算やリソースを振り向けていく必要もあると思っています」

「先生を『憧れの職業』にしたい」

平岩氏は、教員が働く時間も多様であっていいと考えている。

「短時間勤務はほかの先生との公平性もあるので、場合によっては給料を調整したり、非常勤や業務委託に変更したりする必要はありますが、雇用形態が変わっても仲間であることには変わりはありません」

これだけ働き方の多様性を認めるのはなぜか。

「日本では先生のなり手が減っていますが、フィンランドのように先生が憧れの職業になってほしいのです。そうでないと学校は魅力的な場にならない。先生が生き生きと元気に働いていれば、きっと子どもたちも『大人って楽しいんだ』『先生になりたいな』と思えますよね。

では、先生の幸せとは何か。根本的には生徒たちの成長が先生の幸せですが、それに加えて2つ大切なことがあります。1つは、先生が自分の創意工夫でやりたい教育がしっかりできること。もう1つは、仕事と生活のバランスが取れて自分の人生そのものが豊かになることだと思います。

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