独学?習う?プログラミング授業の準備と現実 すでに必修化、子どもや学校は何をすべきか?

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「プログラミング教育を初めて受ける子どもたちには、最初にSociety 5.0がどんな社会なのかわかる動画を見せて『自分たちが生きていくのはこんな時代』と伝えます。そのうえで、コンピューターはすごく計算が得意なんだよ、という話をします。『1秒間に何回計算できるか知っている? 5000万回だよ。人間がかなえたいことをそれだけやってくれるコンピューターと友だちになろうよ』と言うわけです。友達になりたいなら話しかけますよね。『コンピューターと話をするための言葉が、プログラミングなんだよ』と説明すると子どもたちもわかってくれます」

※1 学習活動の分類:文部科学省は「小学校プログラミング教育の手引」において、プログラミングに関する「学習活動の分類の一例」として、AからFまでの6分類に整理している(E、Fは教育課程外)。Aは「学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの」、Bは「学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの」、Cは「教育課程内で各教科等とは別に実施するもの」、Dは「クラブ活動など、特定の児童を対象として、教育課程内で実施するもの」
 
※2 Society 5.0:ソサエティ5.0。内閣府が提唱する未来社会像。AIやIoT(モノのインターネット)、ロボット、ビッグデータなどを活用する豊かな社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続くもので、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する
 

できる子に手伝ってもらう

ただし、勘違いしないようにしたいのは、プログラミング教育はプログラマーの育成が目的ではないということだ。加藤准教授は、本来専門性の高い分野であるため、目的とともに「仕組み」を知ることが重要だと指摘する。

「プロのプログラマーでも、人にプログラミングを教えるのは簡単ではありません。プログラミングの経験がない先生は、算数や国語を教えるのと同じ感覚で技術的なことを教えるのは難しいでしょう。そもそもプログラムとは何かというと、コンピューターを動かすための手順書です。プログラム次第でコンピューターが便利なものになったり、時には使い物にならないこともあるわけです。だからこそ、完璧なプログラミングができなくても、『どうすれば何ができるか』を知っておくことが重要です。そうすれば、場面によってコンピューターを使うべきか否か、どのように使えば便利になるかという判断ができるからです。これがプログラミング教育の目的の1つだと思います」

東京学芸大学 ICTセンター 教育情報化研究チーム 准教授 加藤直樹
東京農工大学大学院工学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て2004年より東京学芸大学准教授。博士(工学)。ペン入力を採用したインターフェースのデザインやシステムの開発および教育の情報化に関する研究、教員養成へのICT活用、教育の情報化に対応できる教員の養成に取り組んでいる。著書に東京学芸大学プログラミング教育研究会が編集した『小学校におけるプログラミング教育の理論と実践』(学文社、共著)がある
(撮影:今井康一)

その判断ができれば、たとえ自分でプログラミングできなくても、専門家に適切な依頼をすることが可能だ。単純になぞらえることはできないが、料理と似ている。その内容がイメージできていれば、たとえ自分で調理しなくても注文することはできるからだ。そう考えると、加藤准教授が示した算数や国語との関係は興味深い。利根川氏は、体育の授業を引き合いにプログラミング教育の捉え方を語る。

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