独学?習う?プログラミング授業の準備と現実 すでに必修化、子どもや学校は何をすべきか?
「プログラミング教育を初めて受ける子どもたちには、最初にSociety 5.0がどんな社会なのかわかる動画を見せて『自分たちが生きていくのはこんな時代』と伝えます。そのうえで、コンピューターはすごく計算が得意なんだよ、という話をします。『1秒間に何回計算できるか知っている? 5000万回だよ。人間がかなえたいことをそれだけやってくれるコンピューターと友だちになろうよ』と言うわけです。友達になりたいなら話しかけますよね。『コンピューターと話をするための言葉が、プログラミングなんだよ』と説明すると子どもたちもわかってくれます」
できる子に手伝ってもらう
ただし、勘違いしないようにしたいのは、プログラミング教育はプログラマーの育成が目的ではないということだ。加藤准教授は、本来専門性の高い分野であるため、目的とともに「仕組み」を知ることが重要だと指摘する。
「プロのプログラマーでも、人にプログラミングを教えるのは簡単ではありません。プログラミングの経験がない先生は、算数や国語を教えるのと同じ感覚で技術的なことを教えるのは難しいでしょう。そもそもプログラムとは何かというと、コンピューターを動かすための手順書です。プログラム次第でコンピューターが便利なものになったり、時には使い物にならないこともあるわけです。だからこそ、完璧なプログラミングができなくても、『どうすれば何ができるか』を知っておくことが重要です。そうすれば、場面によってコンピューターを使うべきか否か、どのように使えば便利になるかという判断ができるからです。これがプログラミング教育の目的の1つだと思います」

東京農工大学大学院工学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て2004年より東京学芸大学准教授。博士(工学)。ペン入力を採用したインターフェースのデザインやシステムの開発および教育の情報化に関する研究、教員養成へのICT活用、教育の情報化に対応できる教員の養成に取り組んでいる。著書に東京学芸大学プログラミング教育研究会が編集した『小学校におけるプログラミング教育の理論と実践』(学文社、共著)がある
(撮影:今井康一)
その判断ができれば、たとえ自分でプログラミングできなくても、専門家に適切な依頼をすることが可能だ。単純になぞらえることはできないが、料理と似ている。その内容がイメージできていれば、たとえ自分で調理しなくても注文することはできるからだ。そう考えると、加藤准教授が示した算数や国語との関係は興味深い。利根川氏は、体育の授業を引き合いにプログラミング教育の捉え方を語る。