青春18きっぷ、魅力は「節約」よりも「自由度」だ 途中下車すると、旅がずっと楽しくなる
私はこの自由さを大変気に入っている。優柔不断なのかもしれないが、旅の途中でもいろいろなところに目が移り、その場で行き先を変更することが多々ある。そのため、同行者に気を使うことなく、気ままに動ける一人旅を好む。仮に失敗があっても誰にも残念な思いをさせることもない。
ある夏の日、18きっぷで東北を旅していた。八戸以北がまだ東北本線だった頃である。その日の夕方、久慈から八戸線に乗る予定だった私は、宿を決めておこうと予約サイトを検索していた。
ちょうどねぶた祭りの時期、青森市内はどこも空いているはずがないので、八戸からは南下して(第三セクターなので別料金を払って)盛岡に泊まるつもりでいた。宿は当日でも潤沢にあり、適度な値段のところに決めようとしていたとき、ふと弘前エリアを検索してみるとキャンセルが出たのか、1つ空きがあるではないか。ねぶた祭りを一度観たいと思っていたので、すぐに予定を変更、確保した。
八戸から青森に向かう車中、駅に停まるたびに浴衣姿の乗客でどんどん混んでくる。青森に到着すると駅前はねぶた一色であった。進むのも困難なほどの見物人の数。
祭りはすごい迫力で、多彩な電光で周囲を威嚇するような形相の山車が目の前を通りすぎてゆく。観客に突っ込むかのような動き、「ラッセラー」の掛け声、重なり合う太鼓の音、あたりを包む熱気、とりまく喧騒と夏の夜空。私は予定を変更してよかったと思い、弘前に向かったのだった。
こんなことが可能なのが青春18きっぷである。
静岡県内は「修行区間」
そして、自由さを味わうためには多少ゆとりのある行程で移動したい。18きっぷでよく聞く鬼門は、東海道本線の静岡県内だ。「あの区間は修行」という人も多い。
例えば、東京から名古屋まで移動しようとした場合を考える。鉄道ファンを別にすれば、時刻表などは使わず、乗換検索で調べる人が圧倒的に多いだろう。仮に2019年8月1日、東京駅を8時に出発するとして、名古屋駅まで普通列車のみで検索してみると、
熱海09:59→【普通静岡行】→興津10:58
興津11:04→【普通浜松行】→浜松12:32
浜松12:45→【普通豊橋行】→豊橋13:18
豊橋13:20→【新快速大垣行】→名古屋14:12
という結果が出てくる。乗換時間を「ゆっくり」と設定し直しても、最後の豊橋発が13:32発になるぐらいである。乗換時間は2分~13分で、慌ただしいことこのうえない(ただ、最近の乗換検索の優秀なところは、熱海から静岡行きに乗るにもかかわらず途中駅の興津乗り換えとなっているところだ。時刻表を見れば一目瞭然なのだが、興津駅始発の浜松行きである)。
さらに困惑させられることは、熱海までは15両編成だったのが、次の静岡行きはロングシートの5両ないし6両編成となり(時間帯によっては3両の場合も)、ほかの18きっぷ利用者と共にぎゅうぎゅうに詰め込まれて、立つことになる可能性が高くなる。
この短い編成は豊橋まで続く。トイレのない編成だってある。
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