罰金だけでは済まない?【EU法規制】甘く見る経営者が陥る深刻なサイバーリスク、「CRA」「NIS2指令」への対応が進む企業と遅れている企業の差

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例えば、EU市場へのアクセス維持、ブランド価値の強化、サプライチェーン内での選定優位性の獲得、インシデント発生時における操業停止や風評被害の回避といった投資効果があり、将来的な市場拡大や顧客維持に直結します。

CRAの技術要件を満たすには、欧州委員会が認定する整合規格への準拠が必要です。CRAの全面施行(2027年12月)より1年以上前に整備されることが目標とされていますが、整合規格は2026年から順次公開予定であるため現時点ではまだ着手できません。

とはいえ、CRA対応は製品のライフサイクル全体に影響を及ぼすため、2027年に出荷される製品に対応するには、今からできる準備を始める必要があります。

「対応が進む企業」と「遅れている企業」の差

海外企業では既にCRAの影響を強く意識し、SBOM(ソフトウェア部品表)の整備やセキュア・バイ・デザインの導入を加速させています。CRAを製品品質とブランド信頼性を高める「戦略的投資」と捉え、EU市場での競争力強化の機会と位置づけています。

先行する日系の大企業でも、製品セキュリティの既存の国際規格やCRAのガイドラインのドラフトを参照し、設計・開発・出荷プロセスに反映させることで、CRAの要求に先回りした対応を進めています。

とくに、2026年9月から施行される製造事業者の報告義務に対応するため、これまで一部の製品や窓口に限られていた「PSIRT(Product Security Incident Response Team)」の設置をグローバルな体制として本格運用を始めようとしています。

しかし、CRAへの対応は大企業と中小企業で進捗に大きな差があります。中小企業ではCRAの認知度が低く、技術的知識や人材、予算の不足が障壁となり対応が遅れています。EUから提供予定のSME向けガイドラインを活用し、関連企業と連携して取り組む必要があるでしょう。

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