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2028年「台湾有事」を描く台湾ドラマ、「期待外れ」と酷評が広がる衝撃。描かれたのは一人ひとりの戦争の物語、問われる備え

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実際に与党・民進党のプロパガンダであったのか。ドラマの中の政治でも、現実の台湾と同じく2大政党制だ。ドラマでの与党「自由党」は、12年の政権という重荷を抱えている――明らかに現実の与党・民進党を想起させる。

一方で「自由党」党首で現職総統は、権謀術数を弄し、若い女性を見下すような人物として描かれている。このあたりは、現実の与党を過剰に持ち上げる印象はない。

第1話の総統選挙は、現・台北市長で野党「民主党」の女性候補が勝利するという設定だ。「民主党」は、100年の歴史ある政党で、党内重鎮は中国共産党との交流が深くて統一を志向する――。これは現実の野党・国民党を想起させる。女性候補はアメリカ帰りの若手、当選には重鎮の支援が不可欠という設定だ。

現実の2大政党も想起できるが

女性総統候補は家族と一緒に帰国し、家族全員がアメリカの市民権を放棄している。中国が侵攻してきた際、台湾を捨ててアメリカに逃げるのではないか?という懸念は、かつて国民党の馬英九氏が総統選挙に出馬した際にも話題になっており、選挙における焦点の1つになっている現実と重なる。

印象に残ったのは「民主党」の重鎮が女性候補を操り、「台湾は中国の統治範囲にある」と宣言させようとする場面だ。重鎮は、黒幇(やくざ)を使って女性候補を脅して操ろうともする。長い歴史がある政党を想起させる。

見事なドラマ仕立てだと思ったのは、当選した女性候補が若手を引き連れて「民主党」を離脱し、野党に転落する「自由党」との連携を発表するところである。中国寄りの重鎮と袂を分かち、中国の侵攻が差し迫る非常事態に連立政権を樹立させるというシナリオだ。

筆者は当初この第1話の視聴後、ドラマの政党が現実のどちらの政党に該当するのか答えを出せなかった。制作側の設定が巧みだったということだろう。だが、こうして振り返ってみると、現実のどちらの政党に該当するかが思い当たり、次回総統選挙後の「2028年春、中国が台湾侵攻に踏み切る」という設定と重なる。

だが、第2話以降、現実の党派対立を思い浮かべるような「政治ドラマ」から離れていった。

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