〈5年に一度〉「ピアノの祭典」ショパンコンクール開幕──ヤマハとカワイの名誉を懸けた熾烈な戦い、絶対王者のスタインウェイへ挑む
「調律師には地獄の時間。選ばれなかったときのつらさ、落ち込みようといったらない。それを80回以上も繰り返すわけだから、かなり堪える」
カワイで前回大会からメインチューナーを務める大久保英質氏は、こう打ち明ける。ここでピアニストから選ばれなかったピアノは、二度と舞台に上がることはない。会場の後方では各社の関係者が、固唾をのんでその様子を見守っている。
どのピアノが選ばれたかは、演奏ごとにピアニストの名とともに読み上げられる。ファイナリストを送り出し、優勝ピアノとして認められるインパクトは計り知れない。そこには、ブランドの名誉をかけた「もう1つのコンクール」がある。

絶対王者スタインウェイ
長らくショパンコンクールの舞台を支配してきたピアノメーカーは、アメリカのスタインウェイ・アンド・サンズだ。1927年の第1回大会から公式ピアノとして名を連ね、その力強く重厚なサウンドで、数々の名演を支えてきた。

今大会では2次予選へ進んだピアニスト40人のうち、スタインウェイを選んだのは24人、カワイ11人、ファツィオリ4人、ヤマハ1人、ベヒシュタイン0人となった。
ベン・シュタイナーCEOは「世界の95%のトップアーティストがスタインウェイを弾いている」と胸を張り、こう例える。
「F1では様々なカーメーカーのマシンが走っているが、もし95%のドライバーがフェラーリを選んだら、誰もがフェラーリを欲しがるだろう。同じことがピアノの世界でも起きている」
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