相次ぐ教員の性犯罪…「学校が仕組みで防ぐ」実効性あるルールづくりの方法とは 教員の信頼が悪用されて起こる被害の「深刻さ」
一番の原因は、教員は子どもにとって無条件に信頼しやすい存在であり、その信頼を利用すれば子どもを思い通りに動かしやすい状況ができてしまうことです。信頼関係の悪用によって、子どもにいくらでも近づけるため、心の距離を詰めて接触し、最悪の場合は性交に至るようなケースもあります。
また、ほとんどの教員はそうではありませんが、小児性愛者や性加害者が計画的に教員になっている可能性も否定できません。そもそも学校はターゲットとなる子どもたちが集まっている場所です。
性犯罪者の傾向として、ものぐさであることが挙げられます。街中を粘り強く何時間も歩き回ってターゲットを探すよりも、すぐ近くにいて、毎日会える場所を好みます。学校は、まさにその条件を満たしてしまっている。子どもとの距離が近くても言い逃れができます。さらに、信頼関係を築きやすそうな子や断らなそうな子に当たりをつけることもできてしまうわけです。
――子どもと日常的に接する立場にある教員が、子どもの身体に触れること自体について、どのような配慮が求められるでしょうか。
子どもの体というのは、親のものでも教員のものでもありません。その子自身のものであり、自尊感情と命の源です。だからこそ、大人が子どもの体に触れるという行為は、決して軽々しく行われるべきではありません。子どもの了解なしに体へ触れる行為というのは、基本的に異常な行為であり、場合によっては犯罪になります。
そのため、「妙に距離が近いな」とか、「やたら触ってくるな」という大人がいた場合には、早い段階で「この人はおかしい」と気づき、距離を取ることがとても重要です(関連記事)。
――今後、日本版DBS(性犯罪歴のある者の対児童接触制限制度)の運用が始まる予定ですが、「初犯を防げない」という課題も指摘されています。
まず大前提として、日本版DBSだけでは子どもを守りきれないということを意識する必要があると思います。日本版DBSは性加害に対する包括的な制度で、これは国としていわば「大きな網をかけようとしている」段階だと言えます。
しかし、日本版DBSの網の目をすり抜けてしまうことは想像に難くありません。なぜなら、学校ごとに制度運用への姿勢に温度差があったり、塾やスポーツクラブなど地域の活動の場では制度が行き届かなかったりするケースもある※からです。
そこで重要なのが、「大きな網」と同時に、地域や学校ごとの実情に即した「小さな網」です。国が定める制度と、各現場でのルールや仕組みづくりが、両輪で動いてこそ初めて効果を発揮します。
以前、イギリス内務省でDBSの設立に関わった方にインタビューしました。「学校だけでなく、子どもに関わるあらゆる関係者と地道な対話を重ね、制度をどう実際に運用していくかを丁寧に詰めていくアプローチをした」と話していました。そうした積み重ねがあって初めて、制度が「形だけ」で終わらず、本当に子どもの安全につながる仕組みになっていくと考えています。
※義務となっている学校等以外の民間教育保育事業者については、制度への参加義務はない。制度に参加するかどうかは事業者の判断に委ねられている