渋幕を「変わった学校」から超人気の「求められる学校」へと押し上げた"土台となる考え方" 言わなくても「自分から学ぶ子どもになる」秘密

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千葉県にある渋谷教育学園幕張中学校・高等学校、通称「渋幕」は東大合格者数が14年連続全国トップ10入りを果たしている超進学校だ(2025年3月現在)。そんな渋幕の生徒や卒業生からしばしば飛び出すのが「渋幕的自由」というキーワード。しかも、その「自由」は、勉強でも行事でも部活動でもあらゆる学校生活において反映されているという。いったいどういうことなのか。ここでは佐藤智著『渋幕だけが知っている「勉強しなさい!」と言わなくても自分から学ぶ子どもになる3つの秘密』から抜粋、再構成して渋幕の教育の神髄を一部紹介する。

渋幕のあらゆる活動の土台「自調自考」

子どもたちが自分自身の好奇心に従って、先生や親から「勉強しなさい」といわれずとも、自分から学ぶ力をつけていく学校があります。それが、千葉県にある渋谷教育学園幕張中学校・高等学校、通称「渋幕」です。

渋幕のホームページで、「教育目標」を確認すると、次の3つの言葉が並びます。

〇自調自考の力を伸ばす

〇倫理感を正しく育てる

〇国際人としての資質を養う

「渋幕らしさ」は、実はひとつの教育目標に支えられています。それは、「自調自考」です。

渋幕のあらゆる活動において「自調自考」が土台になっており、卒業生からも、在校生からも、思い入れのある言葉として必ずといっていいほど挙がります。

「自調自考は何百回と聞かされるので、自然とその力がついていくのだと思います」。「卒業するとき、『自調自考』と書かれた掛け軸を外して記念写真を撮った友達もいたくらい学校を象徴するものです」。そう語る卒業生もいます。

自調自考は文字通り、「自ら調べ、自ら考える」人間を育てていく教育目標です。近年では、さらに「自らを調べ、自らを考える」という意味へと深化しているそう。自分を知ることで、自己と社会を客観視することができると示しているのです。

「自ら調べ、自ら考える」はわかりやすい。調べ、考え、行動する、いわゆる「主体性」や「自主性」を育んでいくイメージです。では、「自らを調べ、自らを考える」とはどういうことか、少し立ち止まって考える必要があります。これはいわば自己認識へのアプローチです。外に向かっていく自己主張的な「自ら調べ、自ら考える」ことと、内に向かう「自らを調べ、自らを考える」自己認識では、ベクトルが逆です。

しかし、その逆方向に向かった矢印がつながっていくことが、渋幕の学びの醍醐味です。校長の田村聡明先生は、自調自考について「人間が生きていく上で欠かせないエネルギーの源だ」と語ります。

「これからの自由な社会で生きていくには、『自分がどうしたいか』という出発点がなくてはなりません。18歳は、現代社会においてはもう大人です。自分が好きで、やりたいことをしっかりと考え、行動に移せること。それは大人として不可欠な力でしょう。自調自考は生徒たちのその後の人生に大きな影響を与える言葉だと考えています」

「自調自考」が浸透している要因

では、なぜ「自調自考」が生徒・先生のすみずみにまで浸透しているのでしょうか。

その要因のひとつとして田村哲夫学園長による講話があります。開校から長く校長講話として続き、現在は学園長講話と名前を変えて、「人間形成」「自由とは」などのテーマで、これからの社会を生きていくために必要なことをメッセージとともに伝えています。田村聡明校長も、「講話を通して、自由の大切さと、それを享受する責務について話をしています」と語ります。

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