これまでの政権人事を見る限り、次期米大統領トランプは選挙公約の多くを本気で実行しようとしているようだ。守るつもりのない公約を掲げる指導者にうんざりしている人々にとっては、うれしいサプライズだろう。だが、経済学という「憂鬱な科学」を長年にわたり学び実践してきた私にしてみれば、トランプとその支持者が思い描いているような結果がもたらされると信じる理由はない。
移民法の執行を強めるのは、よいアイデアかもしれない。しかし、すでに国内にいる不法移民の摘発を強めるとなると、話は違ってくる。そして、それが移民全般を遠ざける形で行われれば、米国は重要な強みの1つを失いかねない。
減税と関税というトランプの別の2つの重要公約はどうか。全世界からの輸入品に新たに10〜20%の関税をかけ、中国製品に対する関税を60%に引き上げるというのがトランプの公約だ。どのような経済政策でも経済専門家の間に意見の対立を見いだすのは簡単だが、関税は大きな例外で、関税を妙案と見なす専門家はほとんどいない。貿易赤字の削減に役立つという証拠がまったくないのが、その主な理由だ。反対に、コストの増大など関税がもたらす負の影響はよく知られている。
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