ドルトン東京学園、暗記中心の受験対策と一線画す「異色の数学」で生徒に変化 「おもしろい授業をするのがいい先生」が原動力
受験を前提にしている学校では、受験で合格することを意識しないわけにはいかない。じっくり考える力を身につけさせたいと教員は思っていても、どうしても受験で点数のとれる指導を優先せざるをえない。中学と高校の連携も難しい。
しかしドルトン東京学園は中高一貫校なので、高校入試を意識する必要はない。大学入試も絶対ではなく、進路選択の1つでしかない。大学入試を受ける必要があれば自分で考えて取り組めばいい、というのが同校のスタンスだ。もちろん、放っておくわけではなく、それを目指し取り組む生徒にはサポートもする。ともかく、テストで点数を取るためだけの指導はしないのがドルトン東京学園なのだ。
「いろいろな考え方を認める」という同校の数学の授業では、「つまらなくて寝ている生徒はいません」と数学科の金行将浩氏は言った。そこに師岡氏が、「全員が数学を好きなわけではないと思いますが、自分の考え方を大事にしてもらえるので、苦手だけどやってみようという生徒はいるはずです」と付け加えた。
自分の考えが認められないのでは、誰しもつまらなくなる。1つの答えしか求められないのでは、なおさら、おもしろくない。眠くもなる。ドルトン東京学園の数学の授業は、そういうものとは明らかに違う。
「いろいろな考え方を認める」のは、教員についても同じだ。指導内容や進度が横並びにされているわけではなく、教員1人ひとりが考えて工夫して自分なりの授業を組み立てている。
ドルトン東京学園では「おもしろい授業をするのがいい先生」
金行氏は、「一般的には、“いかに教科書をわかりやすく解説するか”が教員に求められています。しかしドルトン東京学園では、授業中に教科書を開くことは珍しい。授業準備のときには教科書を開きますが、授業では自分で工夫した教材を使うことが多くなっています」と言った。さらに師岡氏が続ける。
「教科書は、授業が終わって生徒が開いてみたら知識がまとまっている冊子という存在だと思います。私は授業の最後に、『教科書ではこう説明しているよ』と示したりはしています。実際の授業は、目の前の生徒にあわせた教材を持ってきてやることのほうが多い」
そうなってくると、一般的な学校とドルトン東京学園では生徒による教員の評価も違うような気がする。それを質問すると八島氏が、「普通は、わかりやすく教えるのが『いい先生』といわれることが多い気がしますが、ドルトン東京学園では『おもしろい授業をするのがいい先生』なんです」と答えた。「おもしろおかしく」の「おもしろい」ではなく、興味をかきたてる、ワクワクさせるという意味の「おもしろい」だ。そういう授業なら、授業中に寝る生徒もいないはずである。
そうしたドルトン東京学園の数学について金行氏は、「探究心を持った生徒を育てていくことを数学科としては大事にしています」とまとめた。さらに、「探究をするうえでは基本的な力も必要ですから、そちらも充実させる取り組みも行っています」とも付け加えた。
暗記数学が主流になっている現状では、自分の頭で考えることを放棄してしまいがちなので、探究心を育てることにつながりにくい状態になっている。
それでは、学習指導要領の基本的な考え方で文科省が前提にしている「いまだかつてなかったような急速かつ激しい変化が進行する社会を一人一人の人間が主体的・創造的に生き抜いていく」ことはできない。ほかの学校でも、ドルトン東京学園で行われているようなワクワクする授業づくりが、もっと意識されていいのではないだろうか。
(注記のない写真:Flatpit / PIXTA)
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