「癒やす」と勝利演説、国民の不満突いたトランプ氏 「ハリス氏では政策は変わらない」と印象づけた

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

2021年1月6日、議会乱入事件で実質、クーデターを試みたとも指摘されるトランプ氏は当時、政治人生に終止符を打ったともみられていた。トランプ氏の側近や共和党重鎮に加え、共和党寄りの産業界も同氏を批判。当時は大統領復活など到底予想されていなかった。

だが、バイデン政権下で刑事訴追されたことも後押しし、トランプ氏は共和党予備選を制した。本選では、現状の経済情勢などに不満を抱く国民が変化を求める政治環境下、トランプ氏に追い風が吹いた。

度重なるスキャンダルに直面してもテフロン加工がされているように醜聞がこびりつかないことから「テフロン・ドン(Teflon Don)」とも呼ばれるトランプ氏は今回も復活劇を見せた。

両議会でも共和党が多数派の可能性大、公約実現へ

今回、選挙選終盤でトランプ氏とハリス氏の中傷合戦は激しさを増し、アメリカ社会の亀裂はさらに拡大した。

これまでトランプ氏は当選の場合、政敵への復讐も呼びかけてきた。トランプ氏は4件もの刑事裁判を抱えているが、政権発足後に自らに恩赦を与えたり、起訴を取り下げたりすることが予想される。

民主党支持者を中心に法による支配への懸念が高まること必至であり、社会不安が拡大することも懸念される。なお、移民を大量に強制送還する政策なども断行すれば、国内でもデモ活動が拡大すること必至だ。

トランプ氏は、選挙戦で語ってきたことを国民は承知の上で自ら票を入れたとして、公約の多くを実行に移そうとするであろう。選挙人だけでなく、得票数でもトランプ氏はハリス氏を上回り、議会でも上院に加え下院も多数派を握る可能性が高まっているため、なおさらだ。

勝利宣言を行った6日未明の演説でトランプ氏は「国を癒やすのを助ける」と語った。すでに6000万人以上(11月6日集計時点)がハリス氏に票を投じ、選挙結果を受け入れられない国民も多数いる中、今後、トランプ氏は自らも助長した分断国家をまとめていくことができるのか注目だ。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD