子どものからだと心がおかしい、大脳「前頭葉」機能の不活発が増えている理由 本来の意味での「子ども時代」がなくなっている

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「光・暗闇・外遊び」のすすめ

――子どもたちのからだと心の“おかしさ”を克服するためには、何が必要でしょうか。

野井 真吾(のい・しんご)
日本体育大学教授、同大学体育学部長、子どものからだ研究所長、「子どものからだと心・連絡会議」議長
教育生理学、学校保健学、発育発達学、体育学を専門として、子どもの“からだ”にこだわった研究活動を行う。『からだの元気大作戦』(芽ばえ社)、『子どもの“からだと心”クライシス』(かもがわ出版)、『子どもたち5000人に聞いた!学校で大切なこと』(大修館書店)など著書多数
(写真:本人提供)

「光・暗闇・外遊び」を提唱しています。以前、子どもたちの「元気」を測定することを目的に30泊31日の長期キャンプに参加した子どもたちの睡眠・覚醒機能、前頭葉機能、自律神経機能の変化を調べました。すると、キャンプからおよそ1週間で、眠りのホルモンであるメラトニンの分泌が夜になると増し、朝になると減るという正常なパターンになりました。

前頭葉機能、自律神経機能も改善し、「日中は太陽の光を浴びて活動して程よく疲れ、夜は暗さを感じて休息を取る」ことが、子どもたちの心を元気にすることがわかったのです。ちなみに、日中は、散歩など軽い活動でも睡眠リズムが改善することが調査で明らかになりました。

――キャンプではない普段の生活の中では、「暗闇」はどのように取り入れればよいのでしょうか。

夜は明るい光を浴びるとメラトニンが減るため、暗いほうがいいのです。そういう意味では、照明が明るすぎる家が多い気がします。ただし、真っ暗にする必要はなく、夜、リビングの照明を落とす習慣を取り入れることをおすすめしています。

ちなみに、わが家ではリビングのあかりは6個の電球のうち、3個外しています。最初は薄暗いなと思いますが、慣れてしまえば問題なく、高校2年生の娘も21時半には寝てしまいます。また、家でのスクリーンタイムが短い子どもたちは、夜、メラトニンが分泌しやすいことも、調査で明らかになっています。

――毎日塾や習い事で忙しく、常に誰かと競うことを強いられ、失敗すれば自己責任さえ問われてしまう日本の子どもたち。いちばん足りていないのは、やはり、「遊び」なのですね。

赤ちゃんに「いないないばぁ」や「高い高い」をすると、目を輝かせて笑いますよね。その年齢の子どもにとって、ワクワクドキドキ、興奮をむき出しにして楽しく遊ぶことは、子どものからだや心の発達の源です。神奈川県のとある小学校では、始業前の約15分、鬼ごっこなど自分たちがやりたい遊びを決め、校庭でからだを思いきり動かして遊ぶ「ワクワク・ドキドキタイム」を行い始めてから、5年間で落ち着きのない子どもが半分近くに減りました。

「やらされて遊ぶ」ことではなく、子どもが自ら楽しいと「ワクワク・ドキドキ」しながら夢中になれることが、大切なのです。また、子どもだけでなく、私たち大人も楽しみながら「よい加減」で遊びを探求していくことも、忘れないでいたいものです。

(注記のない写真:Graphs / PIXTA)

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
長島 ともこ フリーライター&エディター

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ながしま ともこ / Tomoko Nagashima

育児、教育、PTA、暮らしのジャンルを中心に、書籍、雑誌、PR紙、WEB媒体において取材、執筆、企画、編集、講演等の活動を行っている。また、自身のPTA活動や記事執筆を機に、全国のPTA仲間と「PTA・保護者組織を考える会」を立ち上げ、情報発信やイベントの運営、PTAやP連からの相談活動等を行う。

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