「ドリーム・ハラスメント」を助長?注意したいキャリア教育や探究の落とし穴 大人は好奇心を保護してソーシャルサポートを

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高部氏が、そうしたドリハラの現状について、2020年に著書『ドリーム・ハラスメント「夢」で若者を追い詰める大人たち』で問題提起してから4年。何か変化はあったのだろうか。

「1つは、この問題意識が社会的、あるいは世間的に共有されつつあると感じており、これはポジティブな変化だと捉えています。その一方で、副作用も出てきているように感じます」と、高部氏は言う。

例えば、SNSなどで「ドリハラなんて言葉があると、若い人に夢について聞けなくなる。コミュニケーションが取りづらい」といった声が散見されるという。しかし、高部氏は、決して「夢を持つな」と主張しているわけではないと話す。

「夢を持つことを否定しているわけではありません。むしろ夢に向かって歩んだ人をリスペクトしていますし、子どもたちとじっくり向き合っている中で、『夢はあるの?』と聞くことを否定しているわけではありません。ただ、夢は強要されるものではないと言いたいのです。夢は自然と持つもの。社会人になって初めて思い浮かぶとか、多くの出会いを通じて出てくることも往々にあります。そうした考え方や多様な生き方を許容してほしい。今は、そのあたりの問題が解決されるまでの過渡期にあると感じています」

「キャリア・パスポート」や「探究」が受験の道具にされる懸念

一方、学校現場では、2020年度から新たな学習指導要領が実施され、探究学習に代表される主体的な学びが推進されるようになるなど大きな変化があった。また、小学校は2022年3月、中学・高校では2023年3月からキャリア教育の手引きが改訂されている。その流れの中、興味・関心の深掘りが推奨されており、探究を深めて進路選択につなげたり、総合型選抜などで合格することを目指したりする動きも増えている。

こうした変化について、ドリハラの観点から高部氏はどう見ているのだろうか。

「子どもを持つ親としてキャリア教育の推進を実感したのは、学習指導要領の改訂に伴い、『キャリア・パスポート』が導入されたことですね。よくも悪くも病院のカルテのようで、子どもの状態や、目標とその達成度、その過程でどんなことが身に付いたのかなどを記入・管理するものになっています。確かにわかりやすいのですが、夢を決め逆算して計画的に人生を歩んでいくロジカルな生き方だけが是とされるのだと、子どもたちが受け取ってしまうのではないかという懸念があります。パスポートというネーミングも『これを持っていないと通過できない感』があり、ちょっと重い。新たなキャリア教育の手引きもPDCAが回っていればよいというように読める内容だと感じます」

さらに高部氏は、キャリア・パスポートが受験の道具にされてしまうのではないかと危惧しており、探究学習についても懸念を示す。

「どういった内容を探究学習で扱えば難関大学への合格確率を高められるのかと、戦略的に探究学習に取り組んでしまう生徒や学校が増えると考えています。すでに受験産業も絡んできていますので、本当に興味や関心に基づいた純粋無垢な探究学習なのかという点には疑問符がつきます。こうした状況から、ドリハラが増えているのではないかと感じています」

夢を細かく問われない「学業優等生」にも課題

ドリハラを受ける子どもたちの心配な反応には、4タイプあると高部氏は言う。やりたいことを決められず夢に出合える日を待ち続ける「待機型」、慌てて夢をひねり出す「即席型」、大人が喜びそうな夢を適当に設定する「捏造型」、夢について細かく聞かれることがない「免除型」だ。

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