鹿児島県喜界島で、現役の研究者と共に3年間じっくり学ぶ「サンゴ留学」 応募者ゼロからの1期生、そして迎える新入生

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調査地点を3カ所決めて1週間ごとに採水し、成分を測定した。「思った以上に難しかったですが面白かったです」(宮﨑さん)
(写真:喜界町提供)

「島ならではのこと」不便と感じるか、魅力と感じるか

調査からわかったのは、カルシウムが多い水質のエリアでは、サンゴがよく育っているということだ。詳しい研究結果は、3月初旬に行われた島の祭りのステージでも発表した。

「サンゴの骨格は炭酸カルシウムでできているので、それらを多く含む水は生育にいい影響があるようです。反対に、サンゴにとってよくないのは硝酸が多い水。これは島の農業で使われる肥料に由来するものなので、農家の協力も必要になってくる課題です」

宮﨑さんは、もともと理科系の科目が好きだった。サンゴ留学のニュースをテレビで見た保護者に「こういうのがあるんだって」と教わり、「いいじゃん、楽しそう」とさほどの不安もなく志望校を決めた。体験入学で初めて島を訪れたときのことも、「同い年の子と話してみて、『みんなこんなに優しいんだ!』と驚きました」と笑顔で振り返る。

それに対し、鹿児島市出身の樋口さんには、少しホームシックもあったようだ。

「父が仕事でよく喜界島に来ていたので、いいところだとは聞いていました。でも実際に来てみて半年ぐらいは、『地元で進学すればよかったかな、あの高校の制服が着たかったな』なんて思うこともありました。遊ぶ場所もないし、ほしいものが手に入りにくいなど、島ならではのことも少し不便に感じました」

だが、そんな気持ちを変えてくれたのも「島ならではのこと」だった。

「楽しみ方が変わって、遊ぶ場所がないとは思わなくなりました。毎日海に行ったり、畑の手伝いをさせてもらったり。島の人はみんなフレンドリーで、今は島を離れたくない気持ちが強いです。買い物は、ネットで早めに注文すればいいことだし」

樋口さんは中学までの自分を「何もかもが中途半端だった」と言う。

「部活も勉強も、なんとなくやらされていただけだったと思います。理科は好きだったけれど、これ、と言えるものがありませんでした」

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(写真:喜界町提供)

しかし今、樋口さんは自ら選んだ離島で、自分で決めた忙しい毎日を過ごしている。サンゴ留学で来ている生徒たちは、通常の高校の勉強に加えてサンゴの研究をしなければならない。

「ほかの子よりもシンプルにやることが多い」と笑うが、樋口さんは好きな運動にも積極的に取り組んでいる。高校ではバドミントン部に所属。さらに地域の剣道クラブにも参加しながら、高校生活とサンゴ研究の日々を送っている。

「研究というものに初めて携わって、これまでの自分になかった考え方を学んでいます。研究も楽しいですが、私は正直、サンゴの調査よりもこの島が好きだという思いがモチベーションになっています。将来の夢は子どもの頃から変わらず、助産師になること。高校を卒業したら一度地元に戻って勉強すると思いますが、資格を取ったら喜界島で働きたいなと考えています」

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