ハイエクの代表作として影響力があるのは1944年に発表された『隷属への道』だが、経済学における彼の最も著名な業績は「社会における知識の利用」という短めの論文だ。経済の基礎的諸条件(ファンダメンタルズ)に関する分散した情報を社会がどのように利用し、獲得するかを扱ったものである。この論文は、中央の計画に対する強力な批判ともなっている。
その主張は、広く集中の排除を求めるものであったと解するべきだろう。「社会の経済問題が主に変化への迅速な適応であるという点で合意できるなら(中略)最終的な決定はそれぞれの状況に通じた人々に任せねばならない」とハイエクは述べ、究極的には「何らかの分散化によって解決せねばならない」と結論づけている。ここで言う分散化とは、具体的には市場経済や価格調整メカニズムのことだ。ハイエクが展開した議論は過去何十年にわたり、あらゆる規制を拒む人々の拠り所となってきた。
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