「人が怖い」社交不安症は心の病気、思春期に発症傾向あり必要な教室対応は? 人前での赤面に手の震え、過剰な不安に苦しむ

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清水氏によれば、社交不安の傾向はお笑い芸人などにもよく見られるという。「いつも相手を大爆笑させなければならない」と考えるあまり、つまらないと思われることは社会的な死であると感じ、恐怖を感じるのだという。お笑い芸人でない一般の子どもたちには、「相手に面白い話をする必要はなくて、誰もが天気の話など面白くない会話を適当に楽しんでおり、それが普通だ」と伝えるとよいそうだ。

教員の目配りで「不安の悪循環」を断ち切れる可能性も

近年、学校教育でアクティブラーニングが注目され、生徒の能動的な発言を求める機会が増えた。ある意味、社交不安症の生徒には逆境かもしれない。もちろん、人前でのスピーチを避けたいという要望があれば合理的配慮が必要だ。だが、インクルーシブ教育の観点に立つと、クラスメートや教員の雰囲気次第で社交不安症の生徒によい体験をもたらすこともできる。

「社交不安症の生徒と不安をまったく感じない生徒とが、それぞれの違いを知った上で、互いを尊重する姿勢が大事です。しゃべることに苦手意識があって普段は寡黙な生徒も、落ち着いた雰囲気の中で、じっくり話を聞いてみるとすごく奥深いことを考えているということがわかることはよくあります。その考えを掘り起こすための時間を用意したり、逆にしゃべりたがりの生徒にブレーキをかけたりと、教員が上手に指揮を執ってクラスの心理的安全性を高めることができれば、本当のアクティブラーニングにつながるはずです」

例えば、人前でのスピーチが苦手な社交不安症の生徒は、「きっとうまく話せない」「声が震えてしまう」というネガティブな想像が膨らんで、話すことを回避し、スピーチに対する不安がますます強くなる悪循環に陥ってしまう。もし下を向いたままスピーチしていたとしても、注意するのではなく、皆できちんと聞こうとクラスのよい雰囲気を醸成したり、内容を認めたりすることも大切だ。

一方で、不安に敏感な生徒は、ネガティブな感情に敏感であるだけではなく、ポジティブな感情も敏感に感じることができるという。不安を感じない生徒が感じることのできない、ちょっとした幸せや、芸術に対する感動などを感受性豊かに捉えることができるため、「敏感なことにはよい面もあるのだ、自分の弱さであるとともに強さでもあるのだと捉えてほしい」と清水氏は語る。

これまで、単に「シャイな性格」とも誤解されがちであった社交不安症。認知行動療法のような考え方や行動のパターンを見直す精神医学的、心理学的研究の進歩で、回復の方法は明らかになっている。もし自分の学校や受け持つクラスに、人と接することに苦手意識を持つ生徒がいたら、教員はまず話を聞き、寄り添うことを心がけてほしい。間違っても生徒の自尊心を傷つけるようなデリカシーのない言葉を投げかけないよう、くれぐれも注意するべきだろう。

(文:末吉陽子、編集部 田堂友香子、注記のない写真:msv / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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