「国鉄独占」に逆戻り?欧州の鉄道、揺らぐ自由化 「鉄道版LCC」オランダ参入を阻む既得権益の壁
フリックスモビリティはあくまで運営だけを行う会社で、鉄道もバスも自社で保有する営業用の車両は1両もなく、実際の運行はすべてほかの会社へ委託している点が特徴だ。オランダ国内での運行も、同国の鉄道ネットワークで運行の認可を取得している鉄道会社へすべて委託する形を採る。手続きが順調に進んだ場合、運行開始は2024年12月を予定しており、まずは1日2便から開始する予定だ。
ところが、これがすんなりとはいかない。
オランダ政府は、2024年12月から新たに幹線での営業権を旧国鉄系事業者のオランダ鉄道(NS)へ直接授与することを計画しており、フリックストレインをはじめとする民間事業者はこの動きに反発を強めている。営業権は、本来はNSも民間事業者も同様に与えられるべきものだ。
旧国鉄との協力を「強制」
オランダのインフラストラクチャー省は、民間の運行事業者に対して7月1日までに国際オープンアクセス鉄道サービスの申請書を提出するよう求めており、さもなければ、民間各社が運行しているルートも、すべてNSの幹線営業権に含まれることになる。
簡単に言えば、幹線営業権がNSのもとへ渡ってしまうと、今後はNSの協力なくしてオランダ国内での自由な営業ができなくなることを意味する。競争上はNSが有利になり、これは当然ながら真の市場開放、オープンアクセスとは言いがたい。
「これは完全に違法であるだけでなく、NSに大きな逆インセン
現状でもオランダ政府は民間企業はもちろんのこと、ドイツ鉄道(DB)やベルギー国鉄(SNCB)といった外国の国営・準国営鉄道事業者であっても、オランダへの国際列車運行を単独で行うことを許可せず、NSと協力することを強制している。
現在オランダへ乗り入れている、フランス・ベルギー・オランダ・ドイツ間の高速列車タリス、DBのICE、英国と欧州大陸を結ぶユーロスターは、いずれもNSと協力関係にあるが、逆に言えばこれらの会社はNSの協力なくして、すなわち「真のオープンアクセス」と言える単独の参入では、短期間のうちに列車の運行を開始できなかっただろう。
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