クラスの5人に1人、繊細なHSCにとって居心地よい教室をつくる教員の特徴 大事なのは「謝る誠実な姿」、NGワードにも注意

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問題なのは、悪気なくHSCの自尊心を傷つけてしまう場合だ。

「大人はつい、『こんなことで悩んでいたら今後やっていけないよ』などと言いがちです。ただ、それを言ったところで、あなたはその子に何を与えられるのでしょうか。細かなことに気がつける気質を、恥ずかしくて我慢しないといけないことと捉えさせたいのでしょうか。教育のプロとして、目の前の子がどんな言葉を受け取れば力を発揮し、活躍できるよう後押しできるかをもう一歩深く考えてほしいです」

HSP教員の気づきがよりよい学校のヒントになる

たまに聞かれるのが、「HSCによる行動と発達障害による行動は、一見類似するものがある」という声だ。これに対し杉本氏は「発達障害の診断は医師がすることですが、HSCに限らず、長い間ストレスにさらされていると一見したところ部分的に似た状態になることは珍しくありません。ですが、場の空気を読む力や共感力の高いHSCがそうした状態になるまでなぜ誰も対応してあげなかったのでしょうか?日常生活に支障をきたすほどならば事態は深刻です」と語気を強める。すでに対応が遅れている証拠であり、第三者を介入させたり、前のクラスや家庭での様子をヒアリングしたりして、HSCが落ち着いて過ごせる環境を整える必要がある。

さらにHSCの生きづらさを解消するためには、学校組織のあり方や教員同士のつながりも見直してほしいと杉本氏は力を込める。

「学校管理職(校長、副校長、教頭)や主幹教諭がHSCの特徴を理解し、現場の教員に対して適切な言動や振る舞いを指導するよう心がけてほしいです」

また、もしHSP(Highly Sensitive Person)の教員がいたら、キーパーソンとしてその人の気づきをくみ取るとよいと言う。

「思慮深く小さな心の変化にも気づくHSPは、子どもの心を育てる教員の仕事に向いています。子どもたちに必要とされる人ですから、自分の感性に自信を持ってリーダーシップを発揮し、教育現場でおかしいと感じたことには声を上げてほしい。『気づいてはいけない』『気づいても言ってはいけない』と感じる職場は改善されるべきですし、効率や生産性だけを重視する仕事はただの作業です。『自分は今、とても大事なことをしようとしている』ということを思い出し、教育者として子どもを育てることを諦めないでください。そしてマネジメント層は、その声を学校現場の改善につなげてください」

5分の4が非HSCだと思えば、多数派を意識するだけでも表面的な見え方はよいかもしれない。しかし、学校や教員が当たり前の配慮を心がけ、一人ひとりの個性に寄り添うことができれば、HSCも自分らしく生き生きと過ごせる。すべての子どもの健やかな心の成長を後押しする教室こそ、全員にとって居心地のよい環境なのではないか。

(文・末吉陽子、編集部 田堂友香子、注記のない写真: Kazpon / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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