クラスの5人に1人、繊細なHSCにとって居心地よい教室をつくる教員の特徴 大事なのは「謝る誠実な姿」、NGワードにも注意

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「カナリアは人より早く毒物を察知してさえずりを止める習性から、かつて、炭鉱労働者にとって一大事を未然に防ぐ大事なパートナーでした。この話はクラスの中のHSCに置き換えることができます。もしHSCがクラスでの居心地が悪いと感じていたなら、それはクラスの環境自体に異常があるサインです。そのサインをキャッチして早期に学級運営を見直せば、何かトラブルが起こる前にクラスの状態を整えることができます

HSCは「ちゃんと謝れる先生」の姿に安心する

では、HSCにとって居心地のよい教室を維持するために、教員は何に気をつければよいのだろうか。杉本氏は、HSCによくある相談からこう説明する。

「わかりやすいのは、『強い口調』『せかす口調』を改善することです。そもそも大声で怒鳴ったり、威圧的な話し方をするのは問題ですから、厳しい指導が必要な場面でも適切な言葉遣いを意識してください。それだけでHSCは『怒られないように、嫌われないように』という視点だけで自分の居場所を探す人生から解放されます。また、自分の納得がいくまで取り組みたいHSCは、せかされると過度なプレッシャーになります。時間内に作業を終えることも重要視されがちですが、テストなどを除いては粘り強く取り組む姿勢を評価するなど、視点を変えた接し方も大切です」

HSCの学校生活は、先生が理解者であったかどうかで大きく変わる。何も「HSCだから」と特別に対応してもらったわけではなく、「それが嫌なのは当然だよね」と無秩序な環境を正してもらえた経験が大きく響くようだ。そもそもHSCは、刺激に敏感であるという気質にすぎず、具体的に何に対してどのような気持ちになるかは人それぞれだ。「この子はHSCだから配慮してよね」とHSCを言い訳にされるのは本人も周りも納得しがたいため、「この子はこれが苦痛なんだよ」と原因を特定して伝えるべきだ。とはいえ、HSCの要望は何も極端なものではない。例えば「上着は禁止」などという理不尽なルールを「寒い人は自由に暖かくしてね」と見直すだけでよかったりする。

これらを見ると、教員と生徒の関係以前に、人間同士の望ましいコミュニケーションがあればさして問題はないことが見えてくる。杉本氏曰く(いわく)、HSCにとって最も大切なのは「教員が子どもに対して誠実なこと」だそうだ。

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(画像:つむぎ / PIXTA)

「HSCが居心地のよかったクラスを話す際に共通するのは、『先生がちゃんと謝ってくれた』ということなんです。深刻な謝罪ではなく、ちょっとした間違いやミスを『あ、ごめんね』『ごめん、また忘れちゃった』と謝る程度ですが、これはとても象徴的な振る舞いだと思います。教員は完璧でなくてはいけないという固定観念にとらわれず、潔く失敗を認めて謝れるのは、まさに誠実な態度の一つでしょう。HSCは、「正しいことは正しい、違うことは違う」といつでも変わらない対応を大事にし、そうした環境に安心を覚えます。周りの言動や態度もよく見ているので、一方で子どもだましの対応やズルをして褒められるような環境は非常に居心地悪く感じるでしょう。一生懸命ルールを守っているほうがルールを守っていない生徒よりも過ごしづらい環境ならすぐに変えるべきです」

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