新年度のスタートで重要「学級開き」成功のコツ、指導効果の高い教師の共通性 上越教育大・赤坂真二教授が具体例で指南

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指導効果の高い教師の学級開きに見る「共通性」

地域の事情や児童生徒の実態、何より教師の個性は異なります。したがって、それに応じて実践は多様であっていいのです。しかし一方で、「外してはいけない原則」があるのではないでしょうか。今紹介したような指導効果の高い教師の学級開きを見ていると、そこには共通性が見いだされます。

近藤氏は、入学式で行われることを入学したての児童に丁寧に伝えています。ときには練習を通して、これから始まる未知の時間に対して見通しを持たせています。そして、入学式後は、まずトイレの心配をして体に関するケアをします。それから全員の顔を見て、まず入学式の様子を褒め、「会いたかった」と心からの歓迎の気持ちを伝えています。

海見氏も入学式の様子を思い切り褒め、「楽しみになりましたよ!」とやはり歓迎の気持ちを伝えています。そして教科書配布の場面では、文字にするとしつこいくらいに丁寧に「乱丁・落丁」に関する確認をしています。これは持ち物、とくに教科書の不備は登校意欲を減退させることを海見氏が経験的に知っていたからです。

心理学者であるブロフィは人の動機づけ、つまりやる気を「期待×価値」のモデルで説明しています(ジェア・ブロフィ著・中谷素之監訳『やる気をひきだす教師 学習動機づけの心理学』〈金子書房〉)。ここでは、期待とは見通し、価値とはそれをなすことを意味と捉えていきたいと思います。つまり人は、見通しが持て、それをすることの意味を自覚することで、対象に取り組む意欲を高めると考えられます。

皆さんも、やる意味を感じ、それをやれそうだと見通しを持つことができたときにやる気になるということは日常的に体験していることでしょう。指導効果の高い教師の教室では、なぜやる気になっている児童生徒が多いのか。それは見通しが持てているから、つまりここではどうすればいいか、次に何をすればいいか、それをするとどうなるかが、ある程度把握できているからです。予測可能な環境が人に安心感を与えるのです。

また、面白いこと、楽しいこと、利があることなどは、それに取り組む意味になりますが、その場にいることの意味として児童生徒にとっては愛されることも強力な要因となります。人は愛されることで居場所を見つけることができるのです。

児童生徒が意欲的に学校生活を送るためには、学級開きの実践に象徴されるように見通しが持てること、そして何よりも教師や仲間から愛情を注がれることが必要なのです。学級開きや児童生徒との出会いにどんな「ネタ」を用意しても結構ですが、それが彼らへの愛情から発想されているか確認してみていただければと思います。

(注記のない写真:PettyBetty〜Mushroom / PIXTA)

執筆:国立大学法人上越教育大学教授 赤坂真二
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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