原発事故被害者に立ちはだかる「最高裁判決の壁」 高裁判決は国の不法行為認めるも賠償義務否定
最高裁判決の壁の高さを物語る判決だったと思わざるをえない。
仙台高等裁判所は3月10日、福島県いわき市民1339人が起こした東京電力ホールディングス・福島第一原子力発電所事故をめぐる損害賠償請求の集団訴訟で、一審判決を覆し、国には賠償責任がないとする判決を言い渡した。
東電に対しては津波対策を怠った責任の重大性を認め、追加賠償額については一審判決より6割以上増額して3億2660万円の支払い義務を認定した。他方、国については「法律で定められた規制権限を適正に行使し、東電に対策を命じていれば、炉心溶融に至るほどの重大事故を避けられた可能性は相当程度高い」としたが、「津波の想定や防護措置については幅があり、重大事故を防ぐことができたはずであると断定することまではできない」とし、国家賠償法上の損害賠償義務を認めなかった。
判決は国の賠償義務を認めず
昨年6月17日に、「生業(なりわい)訴訟」など先行する4訴訟について最高裁判決で国の法的責任が否定された後、初めての後続訴訟での高裁判決だった。そのため、いわき市民訴訟には全国の原告やマスメディアの関心が集まった。しかし、「最高裁判決を克服し、国の法的責任を認めさせる」(伊東達也・いわき市民訴訟原告団長)という願いはかなわなかった。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら