「Female(女性)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた造語である、「フェムテック」。2030年までに1兆7000億円の市場規模になるとの予測もある中、日本では2020年ごろから、大手企業が参入しだした。
「最近、自動車や電化製品の展示会でそこまでの盛り上がりを感じない中、久しぶりに勢いのいい産業に出会えた」
2022年10月に六本木で開催されたフェムテック製品の展示会、「フェムテックフェス」に参加したあるメーカー社員はこう振り返る。会場に並んだのは、女性の健康課題解決につながる国内外の製品。33カ国から約200の製品が集まり、開催期間の3日間で約2900人が来場した。
世界では、2030年までに1兆7000億円の市場規模になるとの予測もあるフェムテック市場。日本に先んじて開発されている製品を紹介することを目的に、2019年設立のベンチャー企業、fermata(フェルマータ)が展示会を開催した。フェムテック市場に注目する伊藤忠商事と資本業務提携を結ぶなど、2022年4月時点で総額2.1億円の資金調達をしている。
フェムテックに関する明確な定義はないが、一般的には新たな技術を用いて女性の健康課題を解決しようとするサービスを指すことが多い。フェルマータはいち早く、海外で流通する吸水ショーツなどを「フェムテック」とくくって打ち出し、輸入を行ってきた。
大手の参入で市場が拡大
口コミなどを通じて、吸水ショーツをはじめとするフェムテック製品はにわかに注目を集め、大手の参入にもつながった。フェルマータの近藤佳奈COO(最高執行責任者)は、「日本でのフェムテック市場に注目が集まるきっかけは、GUの参入だった」と振り返る。
「フェムテックという言葉の浸透により、女性自身が潜在的なニーズを自覚し、言いやすい社会になったことも相まって、企業も動くようになった」。国内アパレル最大手、ファーストリテイリングが展開する「GU」の広報担当者は、同社の「吸水ショーツ」発売の経緯についてこう話す。
吸水ショーツとは、通常のショーツよりもクロッチ部分の吸水力が優れた下着のこと。国内で流通するほとんどの吸水ショーツは「生理用品」としては認められておらず、どのような目的で使用するかは消費者の判断にゆだねられているが、月経時の経血の漏れ対策などの目的で人気が高まっている。
GUが発売したのは2021年3月。2019年ごろから同社に対し、吸水ショーツ販売を望む消費者の声が増え始めたことが、開発のきっかけとなったが、「こんなに早く大手が参入するとは思わなかった」と業界関係者から声が上がるほどのスピード感だった。
その価格設定も、驚きをもって受け止められた。既存の吸水ショーツの相場は、1枚あたり約5000円で、一部の層にしか手が届かない存在だった。そこに低価格帯ファッションに強みのあるGUは、1枚1490円という価格帯で売り出し、幅広い層の消費者が「試し買い」できる位置づけとなったのだ。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら