教育現場の「叱る依存」、解決に必要なのは「権力勾配を緩やかにする仕組み」 村中直人「カギは『ニューロダイバーシティ』」

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ただ、国の教育提言はとてもよいのですが、「学び方の多様性」の視点が不十分だと思います。あくまでも「普通の子(多数派)」と「普通ではない子(少数派)」の二項対立がベースになっています。保護者の中にも「学び方には正解があり、できる子が優秀で、できない子は落ちこぼれ」という意識が根強くありますが、すべての子どもの学び方にはそれぞれ特徴があります。

私は20年以上の学習支援事業の中で、そのことを突きつけられてきました。私たちは塾や家庭教師という形で個別指導を行っていますが、ニューロマイノリティーの子だけでなく、授業についていけない子など、学校教育の枠組みからこぼれ落ちてしまったさまざまなお子さんがいます。

そう話すと、学校教育で特別支援に関わっている方ほど「すごく大変でしょう」とおっしゃいますが、実際は大きなトラブルもありませんし、みんな落ち着いてそれぞれの教科学習に取り組んでいます。それはなぜか。彼らに合った枠組みで、彼らを熟知したスタッフが一人ひとりと「何の目的で通うのか」を話し合ったうえで勉強しているからです。

この活動を通して感じたのは、やり方を工夫するだけで勉強ができるようになる子がたくさんいること。勉強がうまくいかないのは、子どもの側に問題があるというより、環境や学びの方略の問題が大きいと実感しました。

私の友人にも、読書が苦手だったけれど30歳を過ぎて「自分は座って読むのが苦手なだけで、立っていると読める」と気づいて読書家になった人がいます。それだけ情報処理の癖や学び方は人によって多様なのです。

「あなたに合う方法で学ぼう」というメッセージを発信し、その権利が保障される教育現場をつくっていく。そんなふうに、あるべき姿を多様化・柔軟化していくことで、確実に「叱る依存」は減りますし、子どもたちは主体的になっていくでしょう。

(文:吉田渓、写真:村中直人氏提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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