台湾の産業育成政策、「半導体の次」に定めた照準 台湾の国家発展委員会副主任委員に政策を聞く

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最先端技術をもつTSMCをはじめ、台湾は半導体強国となってICT産業のハードウェア分野で確固たる地位を築いているが、新たな分野での産業成長を模索している。

台湾の高仙桂副主任委員
台湾の産業育成政策について語る高仙桂副主任委員(編集部撮影)
台湾がスタートアップやベンチャー企業の育成に注力している。すでに人工知能(AI)を活用した販促ツールを提供するAppier Group(エイピアグループ)のように日本で上場する台湾発ベンチャー企業も出てきた。半導体でもTSMCの熊本工場新設のように日台間のつながりは強固になっている。
経済・産業・技術政策の司令塔を担う国家発展委員会の高仙桂副主任委員(副大臣)に台湾のスタートアップや半導体など産業政策、日台間経済協力への考えを聞いた。(インタビューは7月に実施)

――蔡英文政権下で新産業創出政策の一環として「アジア・シリコンバレー計画」とよばれるスタートアップ支援政策を行っています。成功していますか。

すでに台湾には約4000社のスタートアップ企業が誕生し、AIや5G(第5世代移動通信システム)、ヘルスケアなどの領域を手掛けている。

蔡政権は2016年から「アジア・シリコンバレー計画」と呼ぶ産業育成策を始め、スタートアップ支援に注力している。まったく環境が整っていない「砂漠」のような状態から始めたが、今では創業やスタートアップ企業を支援する公的な拠点やインキュベーション施設などが90カ所ある。

世界から投資も集まり、スタートアップ企業が活動していくエコシステムが台湾でできており、評価してもらえるだろう。

スタートアップに「優しい環境」をつくってきた

――日本では30年前からスタートアップの重要性を意識したさまざまな政策を打ってきましたが成功しているという声はありません。日本の政策はどう評価しますか。

岸田文雄首相が2022年をスタートアップ創出元年として、担当大臣も置いて注力していることは理解しているが、政策の規模感もこれからだと思うので、コメントは差し控えたい。ただ台湾ではスタートアップ支援であらゆる政府部門が参画して、スタートアップに優しい環境を作り上げてきた。

例えば、教育部(省)は若い世代の創業精神を高めるために各大学に創業支援を行う拠点の整備を担った。卒業まで待たず、優れた学生に機会があれば創業できる環境を用意している。またテクノロジーなど技術面では科技部がサポートを担い、経済部は資金調達の支援を行っている。

私たちの国家発展委員会も国家発展基金を通してスタートアップに助成金を与えている。中央政府だけでなく地方政府も台湾各地でスタートアップの支援拠点を運営している。

――日本では省庁を横断しての産業政策が機能した例はあまり聞きません。なぜ台湾ではできているのでしょうか。

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