働き方改革で注目の元教頭、いかに根強い「教員の固定観念」変えたのか 中村浩二校長「教員が探究的に働ける仕組みへ」

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また、モデル事業における授業改善の1つとして、担任の教員の創意工夫により単元内自由進度学習を導入。「ロイロノート・スクール」を活用し、子どもたち自身が学びの計画を決めて振り返りを行う授業スタイルにした。

「すると、画一的な一斉授業で15時間かかっていた単元が、11~12時間で終わるようになりました。一斉授業についていけなかった子も余白の時間の中でじっくり学習でき、進度の速い子は発展的な問題にチャレンジしてより深い学びができます。ICTの活用は、子どもたちの学びを充実させるのに役立ち、かつ先生たちも余裕を持って子どもに対応できるようになったと思います」

成果は歴然だ。次表のとおり、19年度と20年度の通常業務月の1カ月当たり1人平均残業時間を比較すると、多いときには約10時間の残業時間縮減に成功、確実に残業時間が減ったことが確認できる。

「職員が大きく入れ替わったので比較は難しいですが、翌年の21年度11月には、職員24人中、月80時間超は0人、月45時間超は1人、1カ月/1人平均約26時間という成果が出ました」(中村氏)

校長になったからこそできる「PBL型働き方改革」

中村氏は、2022年度4月から名古屋市立豊田小学校で校長を務めている。22年4月の同校の働き方は、文科省によるガイドラインの勤務時間の上限である月45時間以上の教員が22人中10人、中には過労死ラインの月80時間を超える教員もいた。振り出しに戻った感があったというが、「校長の立場だからこそできることがある」と中村氏は話す。

早速、年度初めの4月に学校の運営方針を説明するPTA総会と地域の学区公民会で、今の日本の教育界の現状と豊田小学校の実情を説いたうえで、「これは持続可能ではない。先生たちには生き生きと教壇に立ってもらいたい」と、学校の働き方改革への協力を依頼した。

また、今回も4月から「校長だより」を発行。前述の個人定時退校日も始め、6月には働き方改革をテーマに校内学習会を実施した。勤務時間外の留守電対応も2学期から始めるため関係者の合意形成を進めており、着実に働き方改革を実現していく方針だ。

着任後の6月に早速、名古屋市立豊田小学校にて働き方改革をテーマにした校内学習会を実施

名古屋市教育センターの教育研究推進事業を利用し、学校専門ワーク・ライフ・バランスコンサルタントの澤田真由美氏を招き、PBL(課題解決)型の働き方改革に取り組む計画も立てている。

「教員は職務自律性が高いとやりがいを感じるという調査結果があります。ですので、自校の課題を自分たちで見つけ、解決策を探究していくことが働き方改革の推進力になるはずです。教員が自らの手で働きやすい環境を整え、子どもたちに豊かな学びを提供できるようになれば、それが新たな文化として学校に根付くのではないでしょうか。その仕組みを校長が責任を持ってマネジメントすることが重要だと考えています」

信じて任せる「サーバントリーダーシップ」を大事にする中村氏は、自校の教員が進める働き方改革のプロセスを楽しみながら見守っていきたいと語る。

「子どもたちのいちばん身近な大人は私たち教員じゃないですか。その教員がいつも疲れていたら、子どもは夢を持てません。また、主体的・対話的で深い学びや探究的な学びの推進が求められていますが、教室で展開したいことは職員室でも展開できないと駄目です。教員が主体的・対話的に、かつ探究的に働けているか、そのロールモデルを示すことはとても大事で、それほど子どもたちにとって教育効果が高いことはないと思っています。大きな教育改革の波も働き方改革の波も、楽しんで乗り越えていくことが大事だと考えています」

(文:田中弘美、写真:中村浩二氏提供)

東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事