トヨタ自動車は11日、今期(2023年3月期)の営業利益は前期比20%減の2兆4000億円になる見込みだと発表した。市場予想を大幅に下回る。業績予想の前提となる為替レートの想定を保守的に見積もったほか、円安効果を打ち消す急激な原材料価格の高騰が利益を圧迫する。
アナリストの予想平均値は3兆3724億円
ブルームバーグが事前に集計したアナリスト20人によるトヨタの今期営業利益の予想平均値は3兆3724億円だった。トヨタの発表資料によると、今期の為替レートは1ドル=115円と足元の130円前後と大きく異なる水準を想定。前期は112円だった。1ユーロは130円(前期131円)を想定している。
トヨタ広報担当の橋本史織氏によると、トヨタの今期の営業利益は1円の円安で対ドルで450億円、対ユーロで60億円増加すると想定されている。
トヨタの決算資料によると、今期は急激な資材価格の高騰の影響が1兆4500億円の減益要因となり、同社が得意とする原価改善努力による3000億円の押し上げ効果を大きく上回る見込み。
トヨタの近健太副社長兼最高財務責任者(CFO)は同日のオンライン記者会見で、今期の資材高騰の影響は「過去に例がないレベルとなっている」と指摘。6400億円と過去最高となった前期の影響の倍以上の水準で「非常に大きい影響だ」と語った。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、トヨタの今期営業利益予想は「数字としては想定を大きく下回る」とし、為替、販売台数や資材高騰の影響などについて保守的な前提が置かれていると指摘。減益要因となる資材高騰の影響は巨額なため、直近で1ドル=130円前後で推移する為替相場の「追い風が通期を通じて吹き続ければ、何とか前年度並みの利益水準」になるとの見方を示した。
プラスとマイナス
今期の連結世界販売台数見通しは前期比7.5%増の885万台。ダイハツ工業や日野自動車も含めたグループ全体では同3.1%増の1070万台を見込む。
決算会見に同席したトヨタの長田准執行役員は、自動車市場の動向を予測することは今期は「いつも以上に難しい」との考えを示した。コロナ禍からの回復が世界全体では大きなプラス要因となる一方、インフレやロシア・ウクライナ情勢、半導体不足の影響があり、「プラスとマイナスが混ざりながら今期は進行していくのではないか」と語った。