大規模停電「一歩手前」の事態はなぜ起きたのか 経産省のルール軽視の対応が生んだ混乱劇

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地震と寒波によって大規模停電寸前の状況に追い込まれた首都圏。その原因を探ると、経済産業省や東京電力の対応のまずさが浮かび上がってくる。

3月に大規模停電の一歩手前の危機を経験した東京電力の本社ビル(撮影:今井康一)

季節外れの寒波に見舞われた3月22日、首都圏は大規模停電の一歩手前になるまで電力事情が悪化した。

突然の停電となった場合、エレベーターに閉じ込められたり、電車が動かなくなって多数の帰宅困難者が発生していた可能性があった。節電が進んだことで最悪の事態は回避されたが、電力需給の逼迫時に講じるべき手順に従った対応が行われておらず、経済産業省や東京電力の対応のまずさが浮かび上がっている。

ずさんな需給逼迫警報の発令

電力需給が逼迫した時の対応について国は、東日本大震災翌年の2012年、「需給ひっ迫警報の発令」という手順書を定めた。震災の教訓を踏まえてエリア全域での停電(ブラックアウト)を防ぐため、新たに需給ひっ迫警報を発令できるように定めた。

今回は3月16日に起きた福島県沖地震により、火力発電所が相次ぎ停止。想定外の寒波による電力需要の急増も重なり、3月21日から23日午前中にかけて電力需給が逼迫した。経産省は3月21日付で需給ひっ迫警報の発令に踏み切ったが、そのやり方はずさんなものだった。

手順書によると、特定の電力会社エリアにおける需給逼迫状況を示す供給予備率(電力需要の予想に対する供給力の余力を示す指標)が3%を下回る見通しとなった場合、該当する電力会社のエリアに対して国が警報を発令することができると定めている。その時間は「前日の18時(午後6時)目途」と明記されている。

しかし今回、発令時刻は午後8時と、ルールで定められた時刻から2時間も遅れた。しかも、経産省が当初公表した文書に「警報」の文言はなく、翌日の需給見通しが厳しいことや無理のない範囲での節電をお願いしたいといった内容のみが記載されていた。

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