打倒ナイキへ、アシックス「王者奪還」への執念 箱根駅伝での屈辱晴らすプロジェクトの舞台裏

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

陸上長距離界に旋風を巻き起こしたナイキの厚底シューズ。一度は完膚なきまでに敗れたアシックスが、そのプライドにかけて頂上奪還を目指す。

2022年の箱根駅伝でもオレンジ色のナイキのシューズを履いた選手が多くを占めたが、前年大会で消えたアシックスも復活。24人の選手が赤い「メタスピード」を履いて走った(写真:共同)

特集「アシックスの逆襲」の他の記事を読む

「わたしたちは、何度でも起き上がる」。

2022年の元旦、こんな言葉で始まるアシックスの全面広告が全国紙に掲載された。続く文章はこうだ。

「2021年1月、レースから、アシックスのシューズが姿を消した。たとえ何度負けようとも、わたしたちは前を向く」「誰よりも真剣に、走りと向き合う。負けっぱなしで終われるか」

具体的な名前こそ出してはいないが、「2021年1月のレース」とは、全出場選手のほぼ全員がナイキのシューズを履いた箱根駅伝を指す。その年、2017年まで着用率トップだったアシックスを履いた選手は1人もいなかった。自らを鼓舞するような全面広告は、翌日から始まる箱根駅伝を強く意識した「反撃宣言」でもあった。

社長直轄の「頂上奪還」作戦

「やられっぱなしで君たちは悔しくないのか。頂上を取り戻すために社長直轄のプロジェクトを立ち上げる」――。

2年前の2019年12月、神戸にあるアシックス本社の大会議室。商品企画や研究所、マーケティング、知財など関係する各部署から集められた10人の社員たちに向かって、廣田康人社長がげきを飛ばした。

プロジェクトの目的は、長距離ランニングシューズの頂上モデルとなるトップアスリート用で最強のシューズを開発すること。創業者・鬼塚喜八郎がよく口にした「頂上(chojo)から攻めよ」という言葉にちなんで「Cプロジェクト」と名付けた、“頂上奪還”作戦が動き出した瞬間だった。

次ページアスリートたちと対話重ねる
関連記事
トピックボードAD