社長直轄プロジェクトで誕生した「メタスピード」により、再び世界の大きな大会で表彰台を目指すアシックス。トップが語る頂上奪還作戦に込めた想い。
世界最大のスポーツ用品メーカー、ナイキが2017年に発売した高反発厚底シューズは、「より速く走れるシューズ」として、マラソンを始めとする世界の長距離陸上界に大旋風を巻き起こした。
このナイキの新たなシューズを着用した選手が主要な大会の表彰台を独占。国内の実業団や大学生選手にも瞬く間に人気が広がり、ついに、かつての王者アシックスのシューズが正月の箱根駅伝から姿を消した。
トップランナーを始めとするアスリートたちからの支持を取り戻すべく、同社は社長直轄のプロジェクトを立ち上げ、本格的なナイキ対抗モデルの開発に着手。そして2021年春、“アシックス史上最速”の長距離レース用シューズ「メタスピード」を発売し、反撃に向けて大きく動き出した。
アシックスは、再びランニングシューズの頂上を制することができるのか。頂上奪還への決意とその手応えを廣田康人社長に聞いた。
敗北から学んだ教訓
――2022年の元旦、全国紙に「負けっぱなしで終われるか」というアシックスの反撃宣言ともいえる全面広告が掲載されました。あれは廣田社長の指示ですか?
いいえ、考えたのは社員たちです。あのメッセージに込めた想いは痛いほどよくわかる。ただ、元旦にあんな刺激的な広告を出して、正月の駅伝で履いてくれる選手がまたいなかったら、やけっぱちの広告だと世間から笑われる(笑)。「本当に大丈夫か」と念を押したら、「大丈夫です、ぜひこれで行かせてください」と言うので、よし、じゃあわかったと。
――頂上に当たるトップアスリートの世界でナイキに敗れ、そこから学んだことは何かありますか。
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