2021年のノーベル経済学賞はどのような研究を評価したのか。受賞者の1人、デビッド・カード教授の孫弟子に当たり、労働経済学を専門とする東京大学の近藤絢子教授に解説してもらった。

今年は3人の経済学者がノーベル経済学賞を受賞した(編集部撮影)
今年のノーベル経済学賞受賞者は、カリフォルニア大学バークレー校のデビッド・カード教授、マサチューセッツ工科大学のヨシュア・アングリスト教授、スタンフォード大学のグイド・インベンス教授に決定した。
労働経済学の分野へのカード氏の貢献について、同氏の孫弟子に当たる東京大学の近藤絢子教授に聞いた(最低賃金と雇用の研究成果を解説した前編はこちら)。
──デビッド・カード氏は最低賃金と雇用の研究のほかに「移民が大勢やってきたら、街の経済に影響を与えるか」という研究を行ったと。いかにも論争になりそうなテーマです。
1980年に、アメリカのマイアミに大勢のキューバ移民が押し寄せたことがありました。その状況は、やはり「自然実験」的なショックとして捉えることができます。
カード氏は、押し寄せた移民がその地域で就労すると、元から住んでいたアメリカ人の雇用に悪影響があるのかどうかを実証しました。
需要と供給が交差するところで雇用と賃金が決まるモデルを想定すると、移民の影響で労働供給が増えたときには、賃金が下がるか失業者が出ることになってしまう。ところが実際は、元から住んでいたアメリカ人の雇用や賃金にはあまり影響がなかったようだ、という結果が出たのです。
つまり、移民を受け入れたからといって、必ずしも地元経済や雇用に悪影響が出るわけではないということを示しました。
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