アメリカのソフトウェア企業買収を決断。M&Aに失敗し続けた過去から脱し、長年の停滞を抜け出せるか。
新社長が見た2つの現場
2020年10月末に社長の内示を受けた後、前社長の津賀氏に「おまえが反対するなら俺はやらん」と、ブルーヨンダー買収の判断を委ねられた楠見氏。津賀氏や買収の窓口役だった樋口氏の助言を受け、樋口氏がトップを務める社内カンパニー、コネクティッドソリューションズ(CNS)社を2021年1月に視察した。
楠見氏がそこで見たのは、ブルーヨンダーのソフトウェアを実際に導入したモバイルソリューションズ事業部と、製造や物流現場の効率化に向けたソリューションを提供する「現場プロセス」事業だった。
パソコン「レッツノート」の製造などを手がけるモバイルソリューションズ事業部では、製品の在庫や部材調達の状況、受注動向、納期などについて、神戸や台湾といった各工場の状況がリアルタイムでシステム上に表示されていた。
ブルーヨンダー導入前は、在庫や部材調達の動向に関する情報収集に追われて現場の社員が疲弊し、会議も状況を報告するだけの場と化していた。
それがブルーヨンダー導入後は、各工場の情報などを自動で細かく把握できるようになり、廃棄や評価減の対象となる在庫を導入前より1割削減できたほか、業務効率化の効果も表れ始めていた。
一方の現場プロセス事業は、センサーや画像認識技術を用いて製造や物流、小売りの各現場の状況を把握し、顧客企業に最適な業務フローや人員配置などのソリューション提案を行っている。
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