民主党に政権交代した米国では、連邦最低賃金を時給7.25ドルから15ドルに引き上げる取り組みが力を増している。経済的にも政治的にも理にかなった動きだ。
現代の経済学者は最低賃金に昔ほど懐疑的ではない。かつては労働市場が完全に機能しているとの前提で、企業には独占的地位を濫用して「超過利潤」を従業員から不当に搾り取る余地はないと考えられていた。最低賃金を引き上げれば雇用が減るという理屈だが、これはもはや時代遅れの経済学だ。
1980年代以降の研究では、最低賃金を穏やかに引き上げても雇用が大きく犠牲になることはない、との結論が一般的になっている。賃上げが雇用の拡大につながる場合があることもわかっている。確かにこうした議論が物議を醸した時期もあったが、その結論の正しさは、精度を高めた最近の実証分析によっても裏付けられている。
私が行った研究では、最低賃金には低賃金雇用を抑制し、「まともな雇用」の創出を刺激する傾向のあることが明らかになった。「まともな雇用」とは、より賃金が高く、より安定した、キャリアアップできる仕事を指す。大学を出ていない人々の就業機会は減る一方だ。彼らの多くはギグエコノミーの単発仕事やゼロ時間契約(最低労働時間の約束もなく、企業の都合で随時呼び出されて働く劣悪な非正規雇用)に頼らざるをえなくなっている。まともな雇用の創出は待ったなしの課題だ。
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