歴史的な不況を前にして経済政策の理論枠組みに検討を加えようというのだから、何とも悠長な話に思われるかもしれない。
だが、各国政府が財政を拡張し、未曽有の規模で政策介入を進める中、政策決定のあり方を突き詰めて考える重要性は増している。これは政策の長期的悪影響を回避するうえでも欠かせない作業だ。その意味で、英財務省が経済の変革に向けて新たな政策決定指針を打ち出したことは歓迎に値する。他国も見習うべきだろう。
私たちの最近の調査によれば、多くの公共政策機関がいまだに費用対効果分析という静的な政策決定手法に過度に依存している。しかし、イノベーションや経済の変容を理解・予測し、促進していくには、こうした手法は適さない。
費用対効果分析は英国で地域格差の拡大につながったと批判されている。費用対効果の評価軸では、生産性の高い地域に投資を行ったほうが効果的という話になりがちだ。その結果、新規投資の大半は豊かな地域に集中し、豊かな地域はますます豊かとなる。このように格差を増幅し、固定化する連鎖が続けば、持てる者と持たざる者との溝も必然的に深まっていく。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待