オークションは「談合」を防げるか 後編/ノーベル賞受賞の理論が現実を変える

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安田洋祐 大阪大学大学院 経済学研究科 准教授/1980年生まれ。2002年東京大学卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得。政策研究大学院大学助教授を経て現職。専門はゲーム理論、マーケットデザイン(撮影:今井康一)
2020年のノーベル経済学賞受賞者が決定したアメリカ・スタンフォード大学のオークション理論の専門家2人、ポール・ミルグロム氏とロバート・ウィルソン氏だ。彼らは学術的な貢献にとどまらず、その知見を基に、アメリカでオークションの制度設計を行い現実の社会にも貢献している。
彼らの功績は、ビジネスパーソンにとっても見逃せないテーマだ。今回は、オークション理論の専門家である大阪大学の安田洋祐氏にじっくり話を聞いた。理論について語ってもらった前編の「2020年のノーベル経済学賞はここに注目!」に続き、後編では、実際のアメリカ周波数オークションの意義や、そこに潜む「談合」の危険についても理解したい。また、近年のノーベル経済学賞の授賞傾向についても言及する。

 

──前編では、同時複数ラウンド競り上げオークション(SMRA)の仕組みについてお話しいただきました。このオークションに参加する各事業者は、どんな入札行動を取ればいいのでしょうか?

事業者にもいろいろあって、免許を1つ獲得できれば満足という事業者もいれば、複数欲しいと考える事業者もいるかもしれない。結局、重要なのは、今ついている値段ですよね。その暫定的な価格と、自分にとっての免許の価値を比べて、いちばん儲けが大きくなると予想されるスロットに入札を続けるのが基本です。

入札に際しての「合理的な戦略」とは

仮にAとBという2つの入札スロットがあって、どちらか片方を獲得できればいいと考える事業者がいたとします。Aを落札してもBを落札しても経済価値があまり変わらないという最もシンプルなケースだと、単純に、値段の安いほうだけに入札すればいい。

例えば、免許を1つ獲得すると5億ドルの収入が、まとめて2つ獲得すると2倍にはならないまでも7億ドルの収入が得られるというとき、AとBにともに3億ドルの値段がついているとします。この値段で、AかBの片方だけ落札できたときは、5-3=2億ドル、2つまとめて落札すれば、7-6=1億ドルの儲けになる。2つ落札すると利益が減るので、これくらい値段が上がっているときは、どちらか1スロットだけを狙っていくことになります。

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