核心技術の国産化と高度化を急ぐ中国。カギになるのは環境の整備だ。
共産主義者は無神論者だ。その代わり、彼らは科学の力を信じる。19世紀後半の欧州では、ダーウィンの影響で社会進化論が流行した。これを受け、マルクスとエンゲルスは経済的基礎の変化に沿って社会が進化すると主張し、科学的社会主義を提唱した。
社会主義思想はその後の実践で大きく変化した。だが科学への憧憬(しょうけい)は、中国共産党の中になお生き続ける。その力で合理的・効率的に現代化強国をつくりたいという理想は、歴代の指導者に共通だ。毛沢東は、米国から帰国した物理学者・銭学森に原子爆弾とミサイル、人工衛星を開発する「両弾一星」プロジェクトを担わせた。鄧小平は文化大革命中から、海外のノーベル賞級華人系科学者と何度も対談し、現代化の知恵を求めた。
中国では今、「国民経済と社会発展の第14次5カ年計画および2035年遠景目標」の策定が進んでいる。9月28日の中央政治局会議ではその草稿が議論され、10月26日からの第19期五中全会で審議が継続される。5カ年計画の策定と実施は定期的だが、今回はより対象期間の長い「遠景目標」が盛り込まれたのが重要。その柱になると見込まれるのが、経済の質的・持続的発展を可能にするような、核心技術におけるイノベーションの推進だ。
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