4年前、国際通貨基金(IMF)の元チーフ・エコノミストであるケネス・ロゴフは、紙幣の段階的な廃止を支持する強力な主張を展開した。
ロゴフは著書の『現金の呪い』で、大量の紙幣、特に高額紙幣が、サプライチェーンの末端に至るまで、脱税と麻薬取引の温床になっていると主張した。1999年に英国で行われたある調査では、ロンドンでテストされた500枚の紙幣のうち、コカインの痕跡がなかったものはわずか4枚だったことが判明している。
現金がマイナス金利政策の阻害要因に
さらに、現金の存在は金融政策の足かせになる。
金庫を100ドル札でいっぱいにする選択肢を投資家が選べてしまう限り、中央銀行がマイナス金利を導入することは難しい。著作の発表当時、その論点は一部の人に難解と受け取られたが、新型コロナウイルスの危機により、マイナス金利は、米国ではまだであるとしても、既に数ヵ国で政策アジェンダにしっかり組み込まれている。
ロゴフがこの著作を発表して以来、支払いメカニズムとしての現金の地位は後退し続けている。たとえばスウェーデンでは、クローナ紙幣の終焉が目前に迫っているように見える。モバイル決済システムのSwishが小額決済の世界を席巻しているためだ。最近ストックホルムでビールを買おうとした人なら誰でも知っていることだが、現金の入った財布しか持っていないと、喉の渇きはいつまでも癒されない。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら