――塩塚副社長が率いるITセクターが日立全体の収益を引っ張っています。何が分岐点だったのでしょうか。
この3年間の中期経営計画を総括した時に、よくいろんな人からその質問をされる。そのとき、いつも必ず1行目に答えるのは「何らウルトラCはやっていません」ということだ。情報やSI、SEの各事業でやるべきことを愚直に細かく1つ1つやってきた成果だ。
ただし、マネジメント体制はずいぶん変えた。この業界では想定外のコストがかさんだり、大口の赤字プロジェクトが出たりする。それは顧客が最初にこういうことをしたいとした要件定義がプロセスとともに変わってしまうからだ。
――具体的にはどういうことでしょうか。
家に例えるとわかりやすい。「2階建ての4LDKの家を造りたい」と、顧客が言っていても、途中でどんどん間取りが変わってくる。「ここに出口がいる」あるいは「このドアはこういうふうに変えてくれ」などだ。これは学会で馬鹿(うましか)理論って言われている。バカの理論。馬を作っていたつもりが鹿になるということ。これがソフトウェア開発の宿命だ。この世界は非常にビジブル化するのが難しい。だが、当社はそれをビジブル化するツールを作ってきた。それが事業運営の肝だ。
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