小人物は問題を解き、大人物は問題を提起する。論理思考やクリティカルシンキングといったスキルへの礼賛で騒がしい今日の世界にあっては、「問題解決の能力」は優秀さの証しだと勘違いされている風潮がありますが、これは「担当者の価値観」とでもいうべきであって「リーダーの価値観」ではありません。現在の日本でも、こうした担当者のスキルが礼賛されているのは、いみじくもこの国が「一億総担当者化」していることを示しています。
一方いまだ誰も気づいていない新しい問題を発見して、それを世の中に提起するのがリーダーの仕事です。「問題の発見」があって初めて、「問題の解決」は意味を持ちます。問題が発見されていないのに、解決の能力をいくら高めても仕方がありません。誰からも入力されない高性能の電卓みたいなもので、それ自体は何の価値も生み出さないのです。
この問題の発見と解決を、極めてエレガントに、1人ですべてやってしまったのがココ・シャネルでした。名実共に20世紀を代表するファッションデザイナーの1人であり、ファッションブランド「シャネル」の創業者です。ココ・シャネルほど、経営における「アート」と「サイエンス」を高次元でバランスさせた人はいないのではないでしょうか? 言うまでもありませんが、問題を解くためにはサイエンスが欠かせません。が、問題を発見するためにはアートが必要になります。まだ誰も気づいていない当たり前のことに疑問を感じるためには、独自の美意識が必要になるからです。
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