小林 一三 コトの価値を見いだしたプロデューサー型経営者

✎ 1〜 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 18
拡大
縮小
(イラスト:谷山彩子)

「モノ」から「コト」へ、あるいは「役に立つ」から「意味がある」へと、価値の源泉がシフトしつつある現代において、小林一三ほど最適な経営者のロールモデルはない、と思っています。そう、あの阪急グループの事実上の創始者で美術収集家や茶人としても知られる小林一三です。

小林一三は慶応義塾を卒業した後、三井銀行に入行しますが、ここではまったく芽が出ず、左遷に次ぐ左遷の末に「三井にいても先は知れている」と、バンカーとしてのキャリアを諦め、34歳のときに、当時は無名だった関西の弱小私鉄「箕面(みのお)有馬電気軌道」に転職します。30歳を超えてからの転職は現在でもリスクが大きいと考えられていますが、当時にあって、しかも銀行とはまったく無縁の鉄道事業に身を転じているわけで、よくぞ思い切ったものだと思わざるをえません。

しかしこのキャリアは小林一三本人にとっても、また関西社会にとっても、あるいは日本全体にとっても、すばらしい僥倖(ぎょうこう)でした。というのも、もとからアートの感性に恵まれていた小林一三が、後に経営者として大成するためのサイエンスの計数感覚を、この銀行時代に身に付けることができたからです。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内