安倍晋三首相が、6月12〜14日にイランを訪問し、ハメネイ(ハーメネイー)最高指導者とロウハニ大統領らと会談した。目的は、戦争の危機が生じている米国とイランの間の緊張緩和だ。ハメネイ師と会談した13日にホルムズ海峡で日本とノルウェーのタンカーが何者かによって攻撃された事件があったため、安倍首相の仲介外交は失敗に終わったとの報道が主流だ。このタンカー攻撃事件については背景の事情が複雑だが、今回の安倍首相の訪問による米国とイランの緊張緩和を阻止しようとする勢力による周到に準備された工作と筆者はみている。今号では、安倍氏とハメネイ師の会談が持つ意義を考察し、次号でタンカー攻撃事件について分析する。
まず、前提として重要になる基礎知識は、イランが神権国家であるということだ。イラン大統領は国民による民主的な直接選挙によって選ばれる。ただし、国家の実権は大統領ではなく、最高指導者が握っている。最高指導者は、高位聖職者らが密室で選出する。イランでの核兵器や弾道ミサイルの開発は、ハメネイ最高指導者の管轄下で進められている。また、イラン正規軍よりも強力で、最新兵器で武装しているイランのイスラム革命防衛隊も、ハメネイ師の指揮命令下にある。
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