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われわれ vs. 彼ら 分断と対立の理由
2018年ほど「分断」が意識された年はなかったのではと思います。外交であれ国内政治であれ、他者との対話を拒否し、身内だけで盛り上がる。意見の異なる相手と違いを乗り越えて協調・協力するよりも、相手の悪口を言い募り排斥する──。そんな風潮が強まった年でした。
社会の分断を考える際に有益なのが『対立の世紀』です。世界各地で起きている分断と対立を伝えながら、その本質的な原因について知見を与えてくれます。
米国ではトランプ大統領支持者とその反対者の対立が先鋭化していますが、その対立を生んでいる大きな要因は中間層の没落です。本書によれば、1970年代には中間所得世帯が米国の総所得の62%を得ていた。それが14年には43%に低下している。エリートの唱えるグローバリズムが中間層を豊かにしていないことに国民の不満は高まっています。
興味深いのは、この本の著者であるイアン・ブレマーがアメリカンドリームの体現者であることでしょう。公営住宅に住むシングルマザーの家庭で育ちながらも、有力な知識人になった。彼の育った時代にはまだそうした社会的な上昇が可能だったわけです。しかし社会の分断が進み、もはやそれは不可能になった。社会から希望がなくなり、ブレマー自身は諦念さえ感じています。「われわれ対彼ら(us vs. them)」という分断が、もはや抜き差しならない状態であることがわかります。
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