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エンタメに秀作多し 頑張れ純文学
文芸評論のうち、私はどちらかというと純文学派なんですが、最近の娯楽小説は歴史、地勢をきちんと書き込み読み応えがあります。純文学はエンターテインメントに押されている。
『宝島』の舞台は沖縄。沖縄のイメージって、政治とリゾートの二つに引き裂かれているけど、『宝島』はそこから抜け落ちているものをうまくすくい上げています。
キーワードは「戦果アギヤー」。米軍基地に侵入して物資を盗み出し、貧しい人々に分け与えたりもするねずみ小僧みたいな人たち。伝説の戦果アギヤー、オンちゃんが嘉手納基地襲撃後に行方不明になり、親友、恋人、弟の3人が自分の人生を生きつつ、オンちゃんの影を追うという青春小説です。二十歳(はたち)をとうに過ぎて、親友は刑務所を出て警官になったり、恋人は教師になったりと、読んでいて元気づけられる。冒険小説でもあるのでワクワクドキドキできる。
さらに、沖縄の戦後史が丁寧に書かれていて、沖縄と本土の関係を考える際に参考になります。コザ暴動なんて学校で教えないでしょう。そもそも、基地から物資を盗まなきゃ生きていけない状況を、占領下とはいえ本土は放置していたわけで、一種の棄民。現在ともつながる。でも、沖縄はやられっ放しじゃないことが伝わり爽快。
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