米中貿易戦争は、米国が経済覇権を守るための闘いから変貌しつつある。ターゲットは、中国が先端技術の分野で自国シェア引き上げを狙った「中国製造2025」である。IT、ロボット、航空・宇宙、バイオなど10分野を指定して、補助金、税制優遇、政策金融によって産業競争力を強化しようとしている。2035年までに世界のイノベーションを主導するようになり、49年に世界トップレベルの「製造強国」になるとうたっている。
こうした産業競争力の向上は、軍事技術の能力と裏腹の関係にある。中国の習近平政権が狙っているのは、経済覇権の皮をかぶった軍事覇権だと、米国のトランプ大統領は読んでいる。
トランプ大統領が仕掛けているのは、関税率を引き上げて中国のコスト競争力を奪おうとする手法である。自由貿易の原則からすると、米国が自ら繁栄の首を絞めているように見えるが、トランプ大統領は自国の軍事的地位を脅かす中国の懐を潤すわけにはいかないと判断した。中国は経済的地位が失速すれば、軍事覇権の野心も失う。かつての冷戦も、ソ連の経済破綻が米国に勝利をもたらした。
確かに、米中の角逐を国家対国家としてとらえると、分が悪いのは中国である。しかし、民間企業同士の競争としてみると、少し風景が違ってくる。
ベンチャー企業がイノベーションを牽引
中国ではネットで新しいプラットフォームを提供する企業や、民泊・貸自転車などのシェアリングエコノミーを牽引する企業が特に元気がよい。配車アプリの滴滴出行(ディディチューシン)は、ウーバーとの価格競争に勝ち、ついにウーバー中国を買収した。民泊大手の途家(トゥージア)は、日本でも有名なエアビーアンドビーを猛追している。IT界の4巨人を「GAFA」と呼ぶのが流行しているが、中国にも頭文字を取って「BAT」と呼ばれる巨人たち、百度(バイドゥ)、アリババ、テンセントがいる。17年の中国の業態別GDP(国内総生産)成長率では、情報通信・情報技術サービスが26%と突出している。中国経済は、第3次産業に成長のエンジンを移してきている。
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