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小説|斎藤美奈子氏お薦めの5冊 自分の世界にないものを読もう。そんな本を選んだ

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文芸評論家 斎藤美奈子
さいとう・みなこ●1956年生まれ。94年、望まない妊娠を扱った小説群を評した『妊娠小説』で鮮烈デビュー。近著に『文庫解説ワンダーランド』。社会評論も手掛ける。(撮影:梅谷秀司)

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男性ビジネスマンは小説を読まないでしょう。たまに、話題作が出たから読もうとしても、今の小説は多少読み慣れていないと面白くないわけ。長い休みに少し接してみるのがいいですね。

ビジネス小説としても読めるのが登山家の田部井淳子さんをモデルにした『淳子のてっぺん』。かなりの長編で最初はタルイかなと思ったけど後半の海外遠征には圧倒される。女性ゆえの困難がよく描かれている一方、エベレストなんかへの遠征がこーんなに大変なのかというのがわかる。これまでの山岳小説は食料をどれくらい調達して、どう詰めるか、資金をどう調達するかなんてことはまず書いていないけど、そういう地味〜なことを積み重ねて現地に行くでしょ。それでも天候のために登頂を断念せざるをえない。あるいは、登頂班を誰にするかで人間関係がギクシャクする。一つの仕事を成し遂げるリアルさが面白いです。

40代以上の男性は少し女性のことを文学で勉強したほうがいいので、2017年文藝賞受賞作『おらおらでひとりいぐも』を。作者は岩手県出身の64歳の主婦。戦後、岩手から東京に出て、専業主婦になって育てた子供二人とは疎遠になり、夫に先立たれた70代の桃子さんの一人語りで、冒頭の「あいやぁ、おらの頭(あだま)このごろ、なんぼがおがしくなってきたんでねべが」からいきなり岩手弁です。

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