デモは社会の変化を象徴する
慶応義塾大学教授●小熊英二(53)
脱原発デモを記録した映画『首相官邸の前で』を監督した
デモの形も社会の変化につれて変わっている。1960年代のデモは「組織動員型」だったが、今は「プロジェクトチーム型」。「日本企業型」「シリコンバレー型」と言ったほうがわかりやすいだろうか。
60年代は労働組合、学生自治会などの共同体単位でデモを行った。動員は共同体の全員参加で、のぼり旗にはスローガンではなく組織名を記していた。
今は学生の運動でも、学内で組織するという発想がなく、インターネット経由で各大学から有志が集まる。彼らはデモの企画を立てネットで情報拡散し、人々の自由参加を待つだけだ。
個々人の行動形態も違う。60年代なら酒を酌み交わし、革命の話で花が咲いた。今はメールで打ち合わせし、酒を飲む文化はない。実務的な活動分担以外の話もしない。真剣さや情熱はあるが、それはドラムをたたいたり、ラップ調のコールを工夫したりする形で表現される。
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