酷暑が終わりを告げるころ、日本の中枢・国会議事堂前に市民が大挙して押し寄せた。この国のデモが力を持ち始めた。
東京・水道橋の古びた雑居ビル。読売ジャイアンツの試合やライブイベントでいつもごった返す東京ドームとは徒歩数分の距離である。その一室で男は一人黙々とパソコンのキーボードをたたく。
周囲の喧噪は目に見えない厚い壁に遮られているようだ。男の作業を止めるのは、時々鳴り響く携帯電話の呼び出し音だけである。「〇〇時、〇〇前でけっこうです」。要件のみを伝えると通話を断ち切る。再び訪れる静寂。小刻みなキーボードの音が時計の秒針のように静かに響く。
ある時間、ある場所で持てるエネルギーのすべてを放出しなければならない。そのためには十分な充電時間が欠かせないはずだ。高田健は今年70歳を迎えた平和活動家である。活動歴はもう55年を数える。
過去、数々のデモを主催した高田が半世紀以上の活動の末にたどり着いたのが、2015年8月30日という日だった。安全保障関連法案に反対する市民12万人(主催者発表)が東京・国会議事堂前に集結した。その歴史的な大規模デモを実現させたのが高田だった。
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