自己肯定感低い子が変わる「プレゼン授業」の中身 「思いを伝える力」を育む「子どもが教える学校」

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もう1つ大事にしているのが、子どもたちの関心や興味をとことん面白がることだ。

「私はそれぞれが持っているものを本気で宝物だと思っていますが、心がけているのは『どういうこと?』『面白そう!』と言葉に出して対話すること。よく小さい子どもが『見てみて! 聞いて!』と主張してきますよね。あのエネルギーを上手に引き出すイメージで一緒に面白がってあげると、彼らの“成長の回路”に電気がビーッと通る感じがします」

情報の「提供」ではなく、「提案」が本来のプレゼンだ

実際、鈴木氏の授業を受けた子どもたちの様子について、大阪府泉大津市立浜小学校5年生担任の金澤真教諭は「誰に何をどうやって伝えるのかイメージが湧いたようです。楽しそうにテーマ選びをして深掘りしていると感じます」と、話す。

同校では、「全国学力・学習状況調査」の結果において論理的思考力などに課題があったことを受け、21年度は5月ごろから週に1度、朝の読書の時間をプレゼンに充てるなどして伝える力の育成に注力してきた。西尾光弘教頭は、21年12月から5、6年生を対象に総合的な学習の時間を使って鈴木氏のプログラムを導入し始めた狙いについてこう語る。

「学校では、プレゼンというと事実を調べて情報提供することに重きが置かれています。しかし社会では、とくにこれからの時代は情報に自分の意見や考えを加え、提案型で相手の行動も促す形のプレゼンが求められます。今後は英語でのプレゼンにも挑戦するつもりですが、まずは提案型を目指しており、まさにそこを専門とする鈴木先生にご協力をお願いしました」

浜小学校での初回授業の様子(記事上の写真も同様)。「ななたこ」を軸にグループワークも取り入れている。同日、教員約30人に対する「プレゼン授業づくり」の研修も行った

昨今、学校で子どもが発表する機会は多いが、同校のように提案まで指導する学校は少ないのではないか。鈴木氏も、こう話す。

「タブレット端末の配布でプレゼンはよりやりやすくなったと思いますが、単なる“まとめ発表”をプレゼンだと思っている先生はまだ多いかもしれません。だから、学校にどんどん本来の『自分の思いを伝えるプレゼン』を広めていきたいですね。『Show and Tell』(※)に『ななたこ』を使ってみるような実践なら、先生方もご自身で気負わずに始められるのではないでしょうか」

※ 米国やカナダの幼稚園や小学校で行われている教育科目。自分の好きなものを提示して聴衆の前で発表する

変化が激しく共通の唯一解が導き出せないこれからの時代は、「私はこう思う」と言い合えるコミュニケーションが必要となるため、「伝える力がないと生きていけない」と鈴木氏は指摘する。一方、伝える力は、何かを始めたり夢をかなえたりする道具だと強調する。

「伝える力を養うと、自分は何に心が動くのかなど、自分を知ることにもつながります。自分を知ることができれば他者を知ることができるので多様性も尊重できるようになり、よりたくさんの人と多くの夢をかなえられると思います。また、マイノリティーな子ほど伝える力をつけてほしいですね。例えば、学校に行けないのもその子なりの理由や哲学がある。本来それは潰されるものではなく何かが開花する種なので、伝えることを通じてその価値に気づいてほしいなと思います」

(文:國貞文隆、編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:子どもが教える学校提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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